燃料アンモニアの社会実装に向けた取り組みが進んでいる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、実施中の石炭火力発電への20%混焼実証に続き、アンモニア製造コスト低減を実現する新規触媒、アンモニア電解合成プロセス、50%以上の高混焼、ガスタービンによるアンモニア専焼技術の開発・実証を行うと発表した。燃料アンモニアは船舶燃料としても期待されており、2050年のカーボンニュートラル実現に欠かせない技術と期待されている。

 燃料アンモニア官民協議会は、導入拡大に向けた行程表を21年2月に発表している。30年に300万トン、50年に3000万トンの国内需要を想定し、価格は現状の1ノルマル立方メートル当たり20円台後半を、30年に10円台後半まで引き下げる目標を掲げている。

 石炭火力発電への20%混焼で需要を立ち上げ、将来的には専焼に移行させていくとともにガスタービン、工業炉、船舶燃料などに広げていくシナリオだ。効率的なクラッキング技術が確立できれば、水素を取り出して使うことも考えられる。

 今回のNEDO事業は、アンモニア製造プロセスの低コスト化・脱炭素化を実現する国産技術を開発できれば、海外で大型アンモニア開発プロジェクトを推進するうえでも有利に働くことを意識したものだ。現行のハーバー・ボッシュ法は400~600度Cの熱と10~30メガパスカルの圧力が必要で、低温低圧プロセスを開発できれば製造時のCO2排出量低減が可能になる。

 ただ欧州の一部にはグリーン燃料としてのアンモニアを評価しない考え方がある。欧州の多くの国は石炭火力発電廃止に動いており、燃料アンモニアは石炭火力発電の延命策との批判もある。

 これらの批判に応えるために、CO2回収・貯蔵(CCS)をともなうブルーアンモニア、再生可能エネルギーで製造するグリーンアンモニアのサプライチェーン全体でのCO2排出削減効果を明らかにする必要がある。

 現状では燃料アンモニア導入を推進する考えなのは日本だけ。燃料アンモニアの使用でCO2排出削減が実現することを証明し、その方法を国際的に認知させることができなければ、日本は気候変動対策に真剣に取り組んでいない国とされてしまう。技術開発と並行して燃料アンモニアの削減効果を検証する手法も急いで進めなくてはならない。日本以上に新しい石炭火力発電を持つ東南アジア諸国に燃料アンモニア混焼技術を普及させるうえでも、CO2削減効果を目に見えるかたちにする必要がある。

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