家電製品、自動車、医療機器、建築・建設資材、繊維製品、日用品、文房具など広範な分野で用いられているポリプロピレン(PP)。汎用プラスチックだが、さらなる高性能化に向け各社、研究開発に励んでいる。関西に本社やR&D拠点を構えるメーカーも熱心に取り組んでおり、特色あるPP用添加剤が相次ぎ生み出されている。

 新日本理化(大阪市)が開発したのはPP用結晶化促進剤「RiKACRYSTA」(リカクリスタ)。リカクリスタを配合したPPは射出成形、ブロー成形する際、金型内で速く硬化でき、生産性の向上が図れる。結晶化速度は同社従来品の汎用結晶核剤の2倍以上で、成形加工時間を20%以上縮められる。また成形サイクルの短縮により、電力など消費エネルギーの削減につながる。

 PP成形品の品質向上にも寄与する。成形加工直後のPPの収縮が等方的で、成形後の歪みを防げるとともに、成形品のヒケ・ソリなどの変形も抑えられる。これによりPP成形品の外観をきれいに仕上げることが可能で、不良品の発生率低減にも寄与する。またリサイクルPPにも適用でき、剛性などを高めるのに役立つ。

 大八化学工業(大阪市)は2種類の粉体状PP用リン系難燃剤の開発に成功した。成形品用「SR-8031」とシート用「SR-8040」で、ともにハロゲンフリーとなっており、リンが溶出しにくいのが特徴。SR-8031は、PPおよびガラス繊維強化PP成形品向け。国際規格のUL-94V試験で「V-0」という優れた難燃性に加えて、高い耐水性と流動性を兼ね備える。SR-8040は、少量添加で高い難燃性を付与できる。SR-8040を10%混合した厚さ0・2ミリメートルのPPシートを使ってUL-94VTM試験を実施したところ「VTM-0」と、最高位の難燃性を示した。

 新日本理化のリカクリスタは、主に自動車部品、家電部材、コンテナ容器など大型PP成形品用途を狙いに日本、アジアを中心とする海外で拡販する。大八化学のリン系難燃剤は、SR-8031は自動車部材、SR-8040は家電部材向けなどでの採用を目指す。それぞれ収益拡大を牽引する大型製品に育つことを期待している。

 軽量化による燃費向上はじめ、プラスチックの活躍の場が、さらに広がるのは必至。これにともない、機能を付与したり、リサイクルプラスチックの物性を回復させたりできる樹脂添加剤のニーズも必然的に増える。同剤を手掛けるメーカーの果たす役割はますます大きくなる。

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