【上海支局=石田亮】年末の上海日本人社会に動揺が広がっている。自宅隔離中の日本人が会食などに参加。その後陽性が確認され、飲食店、自宅などが封鎖される事態となった。記者が住むマンションも濃厚接触の疑いで、突然隔離されることになった。

 12月12日の夕方、マンションの管理会社から連絡があり、突然封鎖されることになったという。階下では数人が慌ただしく、何か準備する物音が聞こえた。夜9時ごろ、ドアがノックされ、開けると防護服姿の数人が立っていた。半年前の隔離ホテルでの光景がフラッシュバックした。

 スマートフォンでの個人情報の登録を指示された。登録後、PCR検査を受けた。心なしか病院で行う検査よりも厳密に行っている気がした。

 入居者全員のPCR検査の結果で、全員が陰性ならば隔離は解除される。しかし1人でも陽性者が出た場合、入居者全員ホテルに移動。14日間の集中隔離となる。

 幸いマンションから陽性者は発生せず14日の晩、48時間の隔離から解放された。しかし、これから12日間の経過観察期間に入る。不要不急でない限り、外出はしないように指導されている。忘年会の予定はすべてキャンセルしなければならない。これから各所に事情を説明することを考えると憂鬱な気持ちになる。

 濃厚接触者が勤めるオフィスも隔離の対象となる。オフィスでの寝泊まりを強いられるケースもある。今回の一件では、同じ飲食店を利用した社員がいたため隔離された日系のオフィスがあった。「オフィスにいたら、突然48時間の隔離を告げられた。正直困惑している。何から準備したら良いか分からない」という日本人駐在員の悲痛な叫びも耳にした。

 今後懸念される問題は、隔離されていた濃厚接触者のなかで陽性者が出た場合である。14日以内に会った人、同じ飲食店などを利用した人は、すべて濃厚接触者となるため、隔離対象者はねずみ算式に増えていく。

 12月13日は、日中の歴史的にナイーブな日だった。日本人コミュニティを介して感染が広がっていないとも限らない事態に、政治的利用やトラブルを懸念する日本人駐在員もいる。

 現在、上海に入国する日本人は、14日間ホテルでの集中隔離、その後7日間は健康観察期間として、自宅隔離に移行する。外出自体は禁止されていないが、不要不急でない限り、人が密集する場所や会食などは避けるように指導されている。

 集中隔離を経ての自宅隔離は、外に出られるという解放感から心のタガが外れやすい。とりわけ上海は世界でも有数の誘惑の多い街だ。しかし、残り7日間、それだけ我慢すれば自由の身だ。今一度、本人の自制心に頼むだけではなく、周囲の人も止める勇気を持つことが大切だ。

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