首都圏では、ついに新型コロナウイルスの感染拡大が第5波の様相を呈してきたが、ワクチンの接種が進み、感染リスクが減っていくことを期待したい。政府は感染拡大を防ぐ一方、生活困窮者などが増えるなかで、いかに経済を再生するか難しい判断を迫られている。米国や中国の経済回復に比べて日本は遅れ気味ではあるが、躊躇なく機動的なマクロ経済政策運営を行って欲しい。

 政府は7月の月例経済報告で、景気の総括判断について3カ月連続で「持ち直しの動きが続いているものの、一部で弱さが増している」に据え置いた。製造業の生産や輸出は回復してきたが、新型コロナの影響で非製造業は弱さがみられる。

 企業活動をみると、生産は持ち直している。業種別では輸送機械は弱含んでいるが、生産用機械は増加している。電子部品・デバイスも増加している。ただし生産の先行きは「半導体不足による影響や海外経済の下振れリスクに十分注意する必要がある」と警鐘を鳴らしている。設備投資は持ち直している。

 また第3次産業活動は個人向けサービス業を中心に弱さがみられ、持ち直しの動きに足踏みがみられるとした。新型コロナの影響は、しばらく続きそうだ。

 財務省の法人企業統計季報によると、21年1~3月期の経常利益は、大企業・中堅企業が前年同期比41・2%増、中小企業が同1・6%増となった。大企業・中堅企業と中小企業で業績に開きがある。また海外経済の回復にともない原材料費が上がる一方、販売価格は下がり経営状態が悪化しているという話もある。為替の動向にも注視していかなければならないだろう。

 海外では米国や中国が順調に経済回復している。月例経済報告によると、米国では景気はいぜん厳しい状況にあるが、着実に持ち直している。また中国では景気は緩やかに回復している。両国とも先行き、この動きが続くことが期待されるが、国内外のコロナウイルス感染の動向や金融資本市場の変動などの影響を注視する必要があるという。

 こうした海外経済の回復にともなう輸出増加を背景に、業績が改善した日本企業も多い。一方、コンテナ不足や海上輸送の停滞から、航空便も含めて物流費は従来の2倍超に高騰しており売上高に占める物流費の割合も上昇している。向こう1年はこの状況が続くと予想する物流業者もあり、予断を許さない。

 政府は感染対策に万全を期すとともに雇用の確保と事業の継続を通じて、国民の命と暮らしを守り抜くことに尽力して欲しい。

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