6月末は上場企業の株主総会が集中した。新型コロナウイルス感染拡大の影響も心配されたが、無事終えて一息ついた感じだろう。だが業績を見ると、そう安心してもいられない。

 例えば長瀬産業、稲畑産業、明和産業、ソーダニッカ、GSIクレオスといった上場中堅商社の2020年3月期は各社とも減収減益だった。第3四半期(19年10~12月)までは国内における雇用改善や個人消費の持ち直しがあった一方、米中貿易摩擦や欧州景気の足踏みといったマイナス要因を抱えていた。そこに追い打ちをかけるように第4四半期(20年1~3月)に入って新型コロナウイルスが世界的に蔓延し、一気に景気後退が進んだ。

 第3四半期までの日本経済には、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果によって緩やかな回復基調で推移していた。しかし海外の景気の落ち込みを受けて輸出が減少傾向にあるなか、製造業を中心に企業収益に陰りが見え始め、製造および設備投資は減速。長引く米中貿易摩擦や中東情勢の緊迫化などの影響も加わり、先行きの不透明な状況が続いた。

 第4四半期からは国内外での新型コロナの感染拡大が打撃となり年度終盤、景気は一段と減速の度を増した。現在は8~9割は回復しているようだが、中国での生産が遅延して物流も停滞するなど、サプライチェーンに乱れが生じている。

 いぜん先行きが見通しにくい状況が続いており、専門商社各社への取材でも今期業績は「かなり落ち込むと予想している」「現時点で大幅なマイナスになるか若干になるか、判断がつかない」「一部は昨年後半から下がり始めている」「医農薬部門はさほどではないと見るが、化学品・樹脂関連のトレード部門は、やや影響が出るだろう」など、さまざまな回答が返ってくる。長瀬産業、稲畑産業、明和産業、ソーダニッカ、GSIクレオスのうち、長瀬産業以外は21年3月期の業績予想を現時点で立てられないでいる。

 商社といえば対面営業が中心だったが、テレワークの推奨でウェブ面談による営業に取って代わられた部分もある。しかし「初対面の顧客にはやはり対面でなければ、なかなか伝わらないこともある」との声がある。機能素材よりも基礎化学品のようなコモディティ製品の方が、そうした傾向が強いと聞く。一方で感染者が少ない地方の顧客には、いまだ突出して感染者の多い首都圏からの訪問が敬遠されがちだという。商社は情報が武器だと長年言われてきた。それをどう生かすかが、アフターコロナで問われている。

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