「新たな生活様式」は企業にビジネスチャンスをもたらす。コロナ禍のなかで化学各社が期待するのは衛生関連分野や非接触需要、リモートワーク拡大・定着化によるエレクトロニクス関連需要などだ。ただ、そこでも競争が激しくなれば差別化が問われてくる。現業で培った技術・経験を活用し、常にスピード感をもって市場に切り込む姿勢が重要となる。
 本紙では6月半ば、国内の主要化学企業の社長にアンケートを実施。コロナショック後の新しい生活様式・ニューノーマル(新常態)に、どのようなビジネスチャンスがあるかとの問いには「衛生関連分野への参入や拡充」との答えが最も多く「非接触需要の高まりを背景としたセンサー関連材料」、食品包装関連などの「巣ごもり需要に対応した製品」と続いた。
 そのほか期待されることとして、テレワーク増加にともなう通信環境整備を受けた5G(第5世代通信)市場の早期立ち上がり、物流体制の再整備によるドローン物流・自動走行・ロボットの開発、蓄電池の普及前倒しなどが挙がった。健康への関心の高まりからメディカル・ヘルスケア関連分野、また抗菌・抗ウイルス製品の需要拡大などへの期待も大きい。
 コロナ禍で普及・定着したテレワークによって従来とは違った環境、働き方が余儀なくされる。仕事の効率が上がったという声がある一方、ストレスなどメンタル面でのケアも重要だ。この領域は自社の社員に対するケアはもちろん、ビジネスとして成立する分野でもあり、すでに市場競争は始まっている。
 海外におけるサプライチェーンの寸断を背景に、国内生産回帰による国内の素材需要の拡大も期待されるが、一方で少子高齢化が進む国内市場への依存度が高まる現実も考えないといけない。成長を見込みにくい国内市場で事業を拡大するのは至難であり、やはり新興国を含めた海外に市場を求める方針は変わらないとみられる。コロナが落ち着けば、各社はこぞって自粛していた海外出張を解禁し、攻めの展開に入るだろう。
 「第2波」が指摘される現状は、ウィズコロナの真っただ中にある。ワクチンや治療薬が開発されてコロナが終息した先には、どのような生活様式・新常態が待ち受けているのか。その実現が数年後だとしても、そこを見越した取り組みが必要になる。ただ「コロナがいかにあろうとも環境保全、サステナブルな製品が求められる現実は変わらない」。化学各社トップは、そう口を揃える。併せて、進めてきた成長戦略を柔軟に修正できる判断力も問われてくる。

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