企業の決算発表がピークを迎えている。第2四半期(4~9月期)はコロナ禍からの需要回復や市況好転などを受けて一様に業績は好調を示す企業も多いが、一方で原材料価格の動向が各社の不安要因となっている。足下の状況をみても予断を許さない状況が続くとみていい。

 各種の経済指標をみても、注意すべき状況にあることが分かる。9月の鉱工業生産指数の速報値は89・5で前月比5・4%低下。3カ月連続のマイナスで1年1カ月ぶりに90を下回っている。半導体不足のほか、新型コロナウイルス感染拡大にともない東南アジアからの部品調達が停滞したことで自動車工業が大幅に落ち込み、他の業種にも影響を与えた。

 今月15日に公表される7~9月期の実質国内総生産(GDP)について、2四半期ぶりのマイナス成長になったとの予測が相次ぐ。ワクチン接種や接種証明の活用などウィズコロナを見越した対策を早期に実行した欧米に比べ、日本の対応は後手に回っていると指摘される。GDPが年内にコロナ前の水準に回復するとした政府見通しの実現は厳しく、日銀も今年度の経済成長率見通しの引き下げを検討する模様だ。

 一方で経済再開にともなう需要回復から業績が上向いている企業は多い。化学品市況の好転もあり、通期業績の上方修正が相次ぐ。電機・電子関連を扱う企業の業績も堅調に推移しているが、鉄道や航空など旅客業界はコロナ禍の影響が長引き厳しい見通しを余儀なくされている。

 大きな懸念材料となるのは原材料価格の動向だ。円安も背景に原油が高騰し、7~9月期の国産ナフサ基準価格は2020年第2四半期以来5四半期連続の上昇、10~12月期は6万円台前半が予想されている。これを川下の製品価格にどれだけ転嫁できるかが下期にかけての大きな課題になる。産油国の動きや為替動向に注意が必要だ。

 加えて、半導体不足の解消がいつになるか。デジタル化が進むなかで、あらゆる産業にとって死活問題となってくる。落ち着きをみせている新型コロナウイルスの感染も、なお予断を許さない状況は続くとみていいだろう。

 決算では、コロナ禍前の水準への回復を強調する企業が多い。実際は、それを上回り過去最高益を上げたところもある。ただ、さらなる成長を続けていくためには一歩踏み込んだ対応が必要になる。起こり得る市場環境の変化を踏まえて需要動向を的確に捉え、ニーズに沿った戦略を先取りして実行する。不透明感が強いなかでは、なおさら重きを置くべき方策である。

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