これまで想定通りには普及してこなかったeラーニングが急速に市場拡大する可能性が出てきた。矢野経済研究所が調査した2020年度の国内eラーニング市場規模によると、前年度比4・5%増の2460億円を予測している。同年度はBtoB、BtoCとも新型コロナウイルス感染症の影響によって遠隔教育の需要が高まり、eラーニングのユーザー数が増加すると見込んでいる。

 新型コロナウイルスの猛威に見舞われて、これまで社会人や生徒・学生は在宅勤務・在宅学習を余儀なくされてきた。生徒や学生の場合、パソコンなどを使って遠隔授業をする先進的なケースが散見される一方、学校側が宿題を含む学習課題を宅配便で送り、学生がこれに取り組むという、極めてアナログな手法が採られるケースも少なくないようだ。

 しかし、このコロナ旋風が過ぎ去った後には、これまでとは異なる社会基盤の構築が想定される。その新たな時代には学習スタイルも大きく変化せざるを得ないだろう。これまでのように、皆が同じ時間に登校して授業や部活動が終わったら下校・帰宅するという学校生活の流れは薄れていくかもしれない。

 矢野経済研究所はBtoC市場の動向について、新型コロナウイルスの終息による社会生活の安定化が見通しにくく、不確実性の要素が多い状況と判断している。その影響で対面授業が行えない学習塾や予備校などでは、映像授業の配信や双方向性のあるウェブ授業のサービス提供が活発化するとみられる。このためeラーニングによる学習への影響は比較的軽微と考えられ、20年度のBtoC市場規模は前年度比6・0%増の1770億円と予測している。

 現在、オフィスワークを中心とするビジネスマンは1人1台のパソコン使用がほぼ当たり前になっているが今後、全国各地で通信環境の整備が進み、生徒や学生に1人1台の持ち運び可能なパソコンが配布されれば、どこでもオンライン学習が可能になる。自宅や屋外など、学校内に縛られない学習カリキュラムを組むことができる日も、そう遠くないのではないか。

 eラーニングの進展に関しては、現在普及が進みつつあるICT(情報通信技術)やIoT(モノのインターネット)などのさらなる発展が後押しするだろう。5月22日にジェイコム埼玉・東日本がさいたま市と「ICTを活用した教育環境の実現に関する協定」を締結した。在宅学習支援に向けタブレット端末を貸与することを明らかにしている。今後も、このような動きが加速しそうだ。

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