欧米化学企業の業績が順調だ。販売量の増加や販売価格の上昇が背景で、2021年第3四半期(7~9月期)に高水準の収益を計上する企業が少なくない。9月に米国南部から東部を襲ったハリケーン「アイダ」によるサプライチェーンの混乱が塗料メーカーなどに影響を及ぼしているが、総じて力強い業績の向上が続いている。

 21年第1四半期(1~3月期)は、当初予想を上回る業績をあげ年間見通しを上方修正した欧米化学企業が目立った。それら企業は第2四半期(4~6月期)に業績がさらに好転、通年で一段と高い水準を見込むようになり、再び上方修正を発表した。

 経済情勢や経営環境に応じて業績見通しを変更することは多い。それは今年に入って相次いだ上方修正だけではない。新型コロナウイルスの感染拡大によって先行きを見通すことが困難になったことから、19年の業績発表に際して公表していた20年の業績予想を取り下げたり、計画していた設備投資を見直したケースは記憶に新しい。

 セラニーズは大型投資計画を見直した企業の一社だ。19年1月に発表した酢酸の増強について、20年4月に18カ月の延期に踏み切った。これによって手元資金を可能な限り豊富にして、直面する難局に対応することにした。

 増強計画の再開を決めたのは今年2月。テキサス州クリアレイクでの年産70万トン規模の増強プロジェクトで、23年上期の完成を見込んでいる。当初より生産プロセスを効率化でき、プロジェクトにかかわる資本コストも削減できるめどが立ったことが主な背景だ。酢酸誘導体やエンジニアリングプラスチックの生産体制を強化する投資も進む。

 さらにエクソンモービルから「サントプレーン」のブランドで知られる動的架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPV)事業を買収することにも合意した。エンプラを中心とするエンジニアード・マテリアルズ(EM)事業を新たな成長のステージに導く案件となる。

 特筆すべきは21年第3四半期の業績発表のオンライン会見において、ロリ・ライヤーカークCEO(最高経営責任者)が「22年に向けて(酢酸と誘導体の)AC(アセチルチェーン)とEMの基礎的な収益力を高め続けることができると確信している」と強調したうえで、両事業の22年の調整後EBIT(金利・税引前利益)の予想に言及したことだ。前提条件を付けながらも、この時期に翌年の主力事業の収益予測を明らかにするのは希有である。予測を具現する取り組みと、その結果に期待する。

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