11月はテレワーク月間。テレワーク推進フォーラム(総務、厚生労働、経済産業、国土交通の4省と学識者、民間事業者などで構成)が主唱するテレワーク普及推進策の一つで、2015年から行われている。テレワークを実施する企業・団体・個人だけでなく、関連する研究活動・啓発活動・支援活動の関係者と、働き方の多様性を広げる国民運動となることを目指しており、多くの関連イベントも開催される。

 テレワークは、情報通信技術(ICT)を駆使した、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方だ。日本では当初、20年の東京オリンピックの開催期間中、混雑や渋滞を避ける観点から導入を促進していたが、なかなか普及が進まなかった。しかし新型コロナウイルス感染症の拡大を背景に導入が一気に加速した。今ではオンラインによる会議や面談、ウェビナーも当たり前となり、クラウドを使ったデータのやり取りも増えてきた。その意味では、もはや新たな働き方の一つとして定着した感がある。

 一方で、ここに来てコロナワクチンの接種が進み、感染者、重症者、死者の数が着実に減少しており、10月1日には政府の緊急事態宣言も解除された。政府が協力を依頼していた出勤者数の7割削減についても、多くの企業で緩和する動きがみられ、都市部では朝夕の電車の混雑が戻りつつある。街中を歩く人の数も増えてきた。

 オンラインで話していた人と久しぶりに対面で話すと、直接会うことの良さを感じるのは確かである。不安定な通信環境で、画質の低いカメラ越し、かつ雑音混じりの音声…。それだけでは分からない表情や目の動き、口調の変化から、人間は多くの情報を読み取っているのだろう。

 しかし、VR/AR/MR(仮想/拡張/複合現実)など関連技術も著しく進歩している。さらにハード、ソフト両面が進化し、仮想空間のアバターの動作や表情から、その人の癖などを含めコミュニケーションに必要な情報を読み取れるようになってきた。GAFAMの一角であるフェイスブックはこのほど、社名を「メタ」に変更。SNSの会社から脱却し、仮想空間で人々が交流するメタバース関連に力を注ぐ方針を示した。今後注目の成長分野だ。

 コロナ禍を経て、われわれは、新たな働き方や、柔軟に仕事と生活をうまくバランスさせる術を身に付けた。これからは技術の新潮流を捉えつつ、リアル・仮想双方の世界を縦横無尽に移動しながら、自らの生き方、働き方を最適化し、さらにバージョンアップしていく段階に入る。

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