産業見本市や国際展示会、コンサート、スポーツ大会などの大規模イベント主催者は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、いぜん難しい選択を迫られている。安心して来場してもらうには感染対策の徹底が求められる。イベント主催者や施設運営者が頭を悩ませるなか、感染防止と社会経済活動の両立を図るため、ドローンを活用した新サービスが注目されている。

 ミライト・ホールディングスのグループ会社であるミラテクドローン(東京都品川区)が、大規模なイベント会場を対象にドローンを活用した抗菌・抗ウイルスコーティングサービスを始めた。ミラテクドローンは2020年7月にドローン専業の会社として誕生した。ドローンパイロットを育成する研修サービスをはじめ、パートナー会社と提携した広域でのドローン運航支援・代行サービスの提供、機体・システム販売などのビジネスを展開している。

 20年9月から、パートナー企業であるサンクレスト(大阪府東大阪市)、東光鉄工(秋田県大館市)とともに実証実験を重ね、ドローンによるコーティングで抗菌・抗ウイルス効果が期待できる一価銅化合物ナノ粒子の付着が認められたため、今回のサービス開始にいたった。

 サンクレストの一価銅化合物を応用した抗ウイルス・抗菌商品「Cu+ブロック」は、1分間でウイルス除去が可能で即効性に優れる。手で触っても一価銅化合物ナノ粒子が簡単にはがれることなく、コーティングが維持される。新型コロナウイルスに対して短時間での不活化効果を示すことも確認済みだ。ドローンの開発は東光鉄工が担当した。農薬散布機として開発されたドローンをベースにコーティング用にチューニングした機体を使用する。このサービスにより、大空間でも効率的なコーティングが可能となる。通常毎日行っていた除菌作業を1カ月に1回程度に減らすことができるなど、施設内のメンテナンスを大幅に軽減できる。

 1000人以上を収容可能なホールがあるホテル、1000席以上の文化会館、野球・サッカー・陸上スタジアムなどが主なサービス対象となる。このほかにも抗菌・抗ウイルス需要の高まりから、テーマパーク・遊園地などのアミューズメント施設、学校・病院・介護施設のエントランスといった幅広いニーズが想定される。

 短時間で効率的にウイルスを除去できれば今後、大規模イベントの開催が増える可能性がある。ウィズコロナ・アフターコロナにおいて、ドローンを活用したコロナ対策は選択肢の一つとなるはずだ。

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