カーボンニュートラルでサステナブルな社会実現に向けて、バイオプラスチックの活用促進が求められている。政府は、2030年までに200万トン規模のバイオプラを導入することを目指している。ただ既存の石油化学系のプラスチックは、ポリオレフィンやポリスチレン、塩化ビニル樹脂などの汎用プラスチックから、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンプラまで幅広い。熱硬化性樹脂にも多様な種類がある。先行するポリ乳酸(PLA)やバイオポリエチレン(PE)、部分バイオマスのポリエチレンテレフタレート(PET)だけでは世界のプラスチック需要には対応できず、さまざまなバイオプラが求められ、研究開発が進められている。

 量産がスタートしているバイオプラにも悩みはある。多くが石油由来に比べコストが高く、また物によっては成形加工性に難がある。そのため10年以上も前にはバイオプラだといって関心は持たれたものの、採用にはいたらないケースがほとんどだった。現在、レジ袋やカトラリーなどにバイオプラの採用が増えているものの、これはBtoC的な世界での、しかも副資材的な商品だ。コストに占める比率は低く、消費者の視線が向きやすいため切り替わりやすいともいえる。今でも工業用途などでの採用は限定的で「既存材料からの価格アップは全く認められない」との声も聞かれる。

 そうはいっても世界の潮流は引き返せないところまできた。さまざまな企業で実験的な採用や開発が増えており、バイオプラスチック協会の識別表示制度の登録件数も、18年度の360件が21年度には12月時点で1000件超にまで増えた。同協会で範疇外の塗料なども対象とする日本有機資源協会のバイオマスマークの認定商品数も、21年度は3月10日時点で1387と3年前の4倍以上に膨れ上がっている。マスバランス方式の認証制度としてISCC PLUS認証取得の動きも広がりつつある。

 意外な声の聞かれる業界もある。アパレル系の繊維産業では、多様なバイオプラ繊維を用いたテキスタイルの製作が相次ぐが「素材開発の難しさは今までと変わらない」という。特殊な風合い、機能を追い求め、かつ少量多品種生産も当たり前の世界だったため、バイオプラになっても製造時の難しさは同じという。「SDGs機運の高まりでアパレル製品に一定の価格上昇が認められるようになった」との声もある。長らく厳しい事業環境の続く国内繊維産業だが、バイオプラの普及のためのヒントが埋もれているといえそうだ。

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