内閣府がバイオ関連市場の拡大・成長に向けて整備を進める「グローバルバイオコミュニティ」として東京圏と関西圏を認定した。2030年のバイオエコノミー社会実現を掲げた「バイオ戦略2020」で示された重要ポイントの一つだ。両バイオコミュニティには国支援の施策パッケージが適用される。今後、バイオ分野で国際的な競争力を発揮する産業の振興と新たなイノベーション創出につながることを期待したい。

 認定を受けたのは東京圏が「Greater Tokyo」(GTB)、関西圏が「バイオコミュニティ関西」(BiocK)で今年4月に決定した。GTBは、つくば、柏の葉、本郷・お茶の水・東京駅周辺、日本橋、川崎、横浜、湘南、千葉・かずさの8拠点で構成。幅広い市場領域で産業のポテンシャルの最大化を図り、世界最高峰のイノベーションセンターを目指す。一方のBiocKは、京都、大阪、神戸の各拠点が中心となる。医薬品、医療機器、発酵などバイオ関連産業と研究拠点が集積する強みを生かし、スタートアップ支援、大学・研究機関間の連携を加速し、バイオによる社会課題の解決に向けたエコシステム構築を目指していく。

 バイオ戦略2020では、30年時点で総額92兆円の市場規模を目指し、市場領域施策を推進することを明記。21年にまとまったバイオ戦略フォローアップで各分野ごとに取り組むべき施策が示された。高機能バイオ素材、バイオプラスチック、バイオ生産システムなど製造関連で53兆円、健康・医薬・食品関連で36兆円、農林関連で3兆円の市場規模目標を掲げた。推進に欠かせない特色ある地域バイオコミュニティの育成に向け、内閣府は21年6月に第1弾として北海道、鶴岡、長岡、福岡の4地域を認定した。

 実は02年に初めて策定された「バイオテクノロジー戦略大綱」には拠点づくり(バイオクラスター化)、技術と産業・実用化の橋渡し体制の整備、関連施策全体の一体となった体系化が記されていた。しかし現在、そこに描かれた状況には至っていない。

 新産業を創出し、国際競争に打って出るには、今回認定された「グローバル」と先の「地域」によるバイオコミュニティのネットワークが、縦割り的発想から脱却することが必要。また目利き役の人材がしっかり機能を発揮することや、秀でた研究成果・技術への思い切った予算配分も求められる。さらに地元金融機関とつながりのある地域企業の参画を優先するよりも、先進性のある企業、気概のある企業を呼び込む心構えを忘れてはならない。

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