温室効果ガスの排出削減・吸収量をクレジットとして国が認証する「J-クレジット制度」に、バイオ炭の農地施用に関する方法論が新たに策定された。稲わらなど農産廃棄物になるものをバイオ炭にすることで、難分解性の炭素を長期間、農地の土壌に固定させる。現在行われている農産廃棄物の焼却によって排出されるCO2を抑え、その削減量や吸収量をクレジットとして認証することで農業分野での新たな選択肢が加わり、新規ビジネスモデルの創出や、クレジット購入したい企業数を増やす効果が期待される。

 バイオ炭は麦わら、稲わら、トウモロコシの葉などが原料。自然乾燥させて一定のサイズに整え、乾燥・酸素のない状態で加熱し炭化させたもの。炭には土壌の中和作用、有用微生物の増殖を促す効果、水質の浄化、ミネラル分の補給など、さまざまな機能があり、土壌資材として政令指定されている。

 木炭の2019年の国内生産量は約1万4800トン。多くが食品調理などの燃料用で、農業用途は約2600トン。J-クレジット制度にバイオ炭の農地施用に関する方法論が策定されたことは、環境保全関連産業としてのバイオ炭の生産、販売・流通といった新しいビジネスを広げる絶好の機会となる。

 これまでJ-クレジット認証対象の農業分野は(1)ブタ・ブロイラーへのアミノ酸バランス改善飼料の給餌(2)家畜排泄物管理方法の変更(3)茶園土壌への硝化抑制剤入り化学肥料または石灰窒素を含む複合肥料の施肥-だった。今回、バイオ炭の農地施用が加わった。温室ガスの排出削減、吸収量の増加につながるプロジェクトを農業者・団体などの創出者が国内実施など諸条件を満たしたうえで登録し、認証を受ける。認証プロジェクトは企業など購入者との間で売買価格と量を決め、譲り渡すことになる。購入企業はESG投資が拡大するなかで、環境貢献などのイメージ効果、CO2排出量のオフセットによる差別化、ブランドの強化、ビジネス機会の獲得など大いにメリットがある。11月9日には農林水産省主催で説明会が開かれた。

 農林水産分野では林業、食品などが認証プロジェクトの約4分の1を占める。農業分野は、まだ実績が少なく、バイオ炭施用を機に盛り上がることを期待したい。化学肥料はじめ、農業資材の効率的な使い方にも役立つが、高品質な作物栽培のためには他の資材投入との施用バランスが大事だろう。バイオ炭産業の振興と併せ、より良い土づくりに向け、農業コンサルタントなどの新ビジネス拡大につながることが望まれる。続きは本紙で

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