物質的に豊かな社会にあっても、発売後ほどなくして需要が急増し、早期に全社の収益拡大に寄与する新製品を生み出せる企業が存在する。京都市に本社を構えるファーマフーズは、その一社。通信販売する医薬部外品の育毛剤「ニューモ育毛剤」がヒットを飛ばしている。

 1997年設立の同社。成長が急カーブを見せ始めたのは約5年前だ。2015年に機能性表示食品制度がスタートし、今や世界で売り上げトップを誇るGABAや、鶏の卵に含まれる成分などを活用した機能性素材のニーズが増加。また12年に自社商品の通信販売に乗り出して以降、独自の鶏卵由来の機能性素材を用いた特色あるサプリメントをはじめ品揃えの拡充を図っている。さらに自らテレビコマーシャル向けの広告制作を手がけるほか、コールセンターを運営して新規顧客を獲得、定期購買につなげてきた。これら取り組みが実を結び、19年7月期には売上高が105億円と初めて100億円を突破。20年7月期は153億円、今期は400億円を予想している。

 近年の躍進を支えているのが独自の卵黄由来の育毛素材「HGP」も配合したニューモ育毛剤。積極的に広告を打ち、育毛効果などが認められ、18年12月の初出荷から瞬く間にヘアケア市場で首位に躍り出た。定期顧客が増え続けており、今年度は第2四半期までに111億円を売り上げ、さらなる拡大が見込まれている。

 同じく京都市内に本拠を置く三洋化成は、大型製品の可能性を秘めた次世代型リチウムイオン2次電池「全樹脂電池」の実用化に、オープンイノベーションで取り組んでいる。同電池はAPB(東京都千代田区、三洋化成が筆頭株主)の社長を務める堀江英明氏が考案したもの。三洋化成の界面制御技術によりブレークスルーを果たすことができた。高エネルギー密度で、異常時の信頼性に優れ、製造工程を簡素化できるといった特徴を兼ね備えている。定置用蓄電池向けを中心に提案するとともに特定用途で採用も目指しており、25年度には900億円規模の製品に育てる。

 大型製品で衆目を集める両社はこのほど、資本業務提携を決めた。化粧品や医薬品などの開発において、それぞれが得意とする技術・素材を融合させる。第1弾としてファーマフーズが今夏に出荷予定の男性向けシャンプーに、フケやかゆみの低減に効果的な三洋化成の両性界面活性剤「ピウセリアAMC」を配合する。ファーマフーズの本社と三洋化成の桂研究所は隣同士に立地。共同による大型製品の創出にも期待がかかる。

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