ファインセラミックスは、機械的強度や電磁気的特性をはじめとする優れた特性により、エレクトロニクスをはじめ産業機械や環境、医療といった幅広い分野で使用されている。組み立て産業の競争力低下によって日本のモノづくりの地盤低下が危ぶまれるなか、わが国のファインセラミックス産業は、研究開発および製造の両面で今なお世界のトップを走る。

 日本ファインセラミックス協会がまとめた「ファインセラミックス産業動向調査2021」では、ファインセラミックス部材の生産総額は2020年が前年比0・2%増の3・1兆円。21年の見込み値は同16・3%増の3・6兆円で、4年連続3兆円の大台を記録する見通しにある。部材生産の内訳では「電磁気・光学用」が全体の7割を占め、21年は「電磁気・光学用」で同15・1%増、「熱・半導体関連」で同17・6%増となるなど「機械的」の同26・0%増を筆頭に、おしなべて2ケタ成長が見込まれている。

 こうした状況下、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が次世代ファインセラミックス製造プロセスの基盤構築・応用開発のプロジェクトを開始する。26年度までの5年間で、ファインセラミックスの一連の工程を対象とした製造プロセス技術と、計算科学の融合・連携によるプロセス開発基盤の構築を目指す。インフォマティクス技術を用いた材料研究においては、これまで「何を作るか」にフォーカスした研究開発事業が行われてきたが、今回は「どう作るか」にフォーカスした製造プロセスの開発を目指す。日本の素材産業のなかで世界シェアが高い、電子部品などのファインセラミックス分野の産業競争力強化につなげるのが狙いだ。

 製造プロセスに関しては、可視化技術およびメカニズム解析技術や支援用計算機システムの開発をはじめ次世代製造プロセス技術、高信頼性メカニズムなど解析技術および製品適用に向けたプロセス技術の開発を委託事業として実施する。次世代製造プロセス技術では、原料粒子の高速開発技術、革新的な成形技術や焼結技術の開発など素材メーカーが得意とする領域が設定されている。開発目標として新規製造プロセスを20種以上開発するとともに、低温焼結技術などの開発により、35年に年間で約247万トンのCO2削減と併せて、出荷額で19年比約1兆円のプラスが期待されている。

 米国や中国でも、これら領域のプロジェクトが進んでいる。日本も今回の取り組みを契機として、先端領域における産業競争力の維持・向上を急がなくてはならない。

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