新型コロナウイルスが世界に蔓延し、各国の都市が機能不全に陥っている。現状では終息は見通せず、新型ワクチンの開発が急務だ。そうしたなか、終息後の世界をみると、日本の産業機械・プラントメーカーが持つ環境技術やノウハウが各国で貢献できるケースがありそう。
 批判を浴びたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の水際作戦。課題はあるが、乗客を下船させず、横浜市の都市封鎖という最悪の事態を回避したことは各国から称賛された。都市封鎖に陥った地域から、対処法の問い合わせが殺到しているという。
 日本国内の感染者は徐々に増えているが、都市封鎖までは現状で考えにくい。理由はさまざまだが、一つには公衆衛生の意識が高いこと。とくに義務教育などでは、昔から手洗いの励行が徹底されている。感染症への強力な対抗策は手洗いの実施だが、小学生レベルで徹底している国はほとんどない。
 一方、日本に比べ、感染症対策として欠かせない水資源に恵まれない国や地域が多いのも事実。経済発展で水需要が増加するなか、6億人以上が給水サービスを受けられず、約24億人が衛生施設を使うことができない(2015年時点)。30年には全世界で水資源が40%不足するという報告もある。
 わが国は水分野で長年にわたり、円借款によるハードインフラ整備、人材育成などソフトインフラで支援を実施してきた。水ビジネス市場の規模は15年に約84兆円、20年には100兆円と拡大が見込まれる。
 世界市場をみると水処理プラントの設計・調達・建設(EPC)および施設管理・補修(O&M)は欧米の水メジャーが強く、各国で基盤強化を進めている。近年は現地ローカル企業の参入が増え、価格競争で日系企業は苦戦している。
 そのなかで日本勢は、エンジニアリング企業、地方自治体をはじめ膜処理や機械などのメーカー各社が協力し、質の高いパッケージ型提案で、現地ニーズに応えようとしている。
 また上水、下水、産業用水、産業排水、海水淡水化など各国ニーズに応じたきめ細かい独自提案が強み。ハードに加えてラオス、カンボジア、ベトナムで人材育成や啓発活動などソフト支援を強化中だ。
 コロナウイルス終息には、製薬会社などによる新しいワクチン開発が焦点になる。同時に終息後の世界は、従来の「経済成長第一主義」から転換せざるを得ない。成長と公衆衛生の両輪が重要だろう。その実現には質の高い水インフラの普及がカギとなりそうだ。

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