不毛な経済対立を繰り広げてきた米中だが、2021年は政治的に大きな転換期を迎えている。米国では先週20日にバイデン新政権が発足し、中国は今年から第14次5カ年計画をスタートさせる。バイデン氏は国際協調路線を打ち出しており、多国間主義の枠組みの再構築に努めようとしている姿勢は歓迎できる。同盟関係を立て直し、自由貿易の下での公正、透明なルールづくりこそが中国と向き合う最善の策であることを世界で共有する機会としたい。

 新型コロナウイルスの感染拡大でグローバル経済が翻弄されるなか、中国は感染をいち早く抑え込んで経済活動を復調させている。20年の国内総生産(GDP、速報値)は、物価変動の影響を除く実質成長率が前年比2・3%だった。19年こそ3・7ポイント下回ったものの、主要国では唯一のプラス成長になったとみられる。20年第4四半期(10~12月期)に限っては前年同期比6・5%と拡大し、回復の加速を印象づけた。

 復調した経済を背景に中国が覇権主義にひた走り、領土や人権問題で独善的に振る舞うことは看過できない。だが、日系企業の多くは公正公平な競争を前提に、中国の巨大市場を取り込みたいというのが本音だ。トランプ政権下のように貿易圧力で中国を屈服させようとしても上手くいかないことは、この間の対立で明白となった。

 中国は米国による通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)などに行っている輸出規制に対抗する狙いから昨年、輸出管理法を施行。また今月15日にも米国への対抗の一環でレアアース(稀土類)の統制を強化すると発表した。中国による世界経済の秩序を乱す規制を認めることはできないが、その引き金となったのが米国の理不尽な対応であることも無視できない。

 米国による対中制裁は中国経済を鈍化させ、世界経済の減速にもつながることから、多くの日系企業も制裁の緩和を求めている。経済界は、米中対立の緩和は世界経済に好影響を与えると踏んでいるのだ。

 いまや世界のサプライチェーン、市場、金融システムの安定など、いずれをとっても中国抜きには語ることができなくなっている。中国を世界経済から排除することは不可能であり、中国を含む自由貿易の新たな秩序づくりが求められている。

 バイデン政権の誕生により、トランプ氏の下で骨抜きにされてきた多国間協調の枠組みが再び築かれることを期待したい。弱体化が叫ばれる世界貿易機関(WTO)の再構築も不可欠であり、日本は存在感を発揮するチャンスである。

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