中部地域でメタネーション(水素と二酸化炭素からのメタン合成)やCCU/CCS(CO2回収・有効利用・貯留)技術確立への取り組みが急進展している。日本ガイシや日本特殊陶業といった、地域の伝統産業であるセラミックス企業が相次ぎ実証に乗り出すほか、わが国でもトップ級のLNG(液化天然ガス)輸入供給事業者の東邦ガス、さらにトヨタ系グループ企業の多くも、CO2回収から再利用への実証や研究開発の推進スピードを上げ始めた。また中部地域の企業や研究機関はメタンtoエチレンやメタンtoプロピレン研究にも着手している。世界的なカーボンニュートラル(CN)の潮流を背景に、樹脂や各種化学品の原料供給が、従来の「化学業界から」という枠組みを越え、地産地消型のまったく新しい構図となる可能性も一部濃厚になってきた。

 中部地域の各企業もCCU/CCSを次代の事業テーマに定め、経営資源投入を加速している。日本ガイシは世界トップのセラミックス膜技術を土台に、分子レベルで空気から窒素やCO2を分離・回収する技術を確立。CO2の回収濃縮メタネーションを含むカーボンリサイクル技術開発に本腰を入れ始めた。日本特殊陶業も、森村グループで設立した森村SOFCテクノロジーが、固体酸化物形燃料電池(SOFC)本格量産にともない、近く自社工場内にSOEC(固体酸化物形電解セル)を組んで、CO2を回収し濃縮、水素生成・エネルギー変換するという実証設備を導入する予定だ。

 大規模な水素製造プラント建設、2025年前後に稼働させる計画を表明したのが東邦ガス。今春からの新経営計画でメタネーション、カーボンリサイクルを、既存のガス事業に匹敵する新事業として育成する方針を打ち出した。ガス供給事業者の強みを生かし、メタネーションやグリーン水素事業に乗り出す。

 巨大産業チェーンを持つ自動車産業でも、デンソーが1年前に安城製作所でCO2回収・循環プラントの実証に入った。現在、稼働・運用中で近く次ステップに移行する。豊田中央研究所も、CO2回収からの人工光合成で一部化学原料の生成にめどを付け、水素利用などの研究を加速中。

 中部地域において自動車関連の取引を持つ専門商社トップは「CCU/CCS技術の進展で、回収CO2を原料としたプロピレンが実用化されれば、これを元とした樹脂製品でカーボンリサイクルが実現する。画期的なことだ」と説明する。多くの技術的課題も山積みだが、地産地消型の新ケミカル原料という夢も見えつつある。

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