海洋プラスチックごみや地球温暖化といった環境問題によって、プラスチックにアゲンストの風が吹き荒れている。プラスチックのさまざまな有用性を考えると、安易に「脱プラ」を唱えるのがふさわしくないケースも多々うかがえる。実際に与える環境負荷に関係ない、イメージ先行型の脱プラの動きもあるように感じる。
 こうしたなか、あえて「環境にやさしい塩ビ」を打ち出す動きがある。塩化ビニル樹脂コンパウンダーであるリケンテクノスは、塩ビの原料の半分が海から取れる塩であることなどをアピールして、塩ビのイメージを高めようとしている。
 塩ビは代表的な汎用プラスチックの一つ。優れた加工性、耐候性、耐水性、強度、難燃性などを併せ持ち、コストパフォーマンスの面からも極めて使いやすい樹脂だ。しかし1990年代に起きたダイオキシン問題の際、発生源の主体や毒性についての誤解から過度なバッシングを受けた。それにより塩ビの内需は、96~97年の201万トンをピークに急減し、ここ10年は100万トンをようやく上回る程度で、かつての半分に縮小している。過去、自動車メーカーが塩ビに回帰する動きもあったが、内需は低迷したままだ。
 リケンテクノスがアピールしているのは①他の石油依存のプラスチックに比べても過半が海から生まれる原料を利用していること(原料の57%が塩素)②リサイクル過程における劣化が少なく、マテリアルリサイクルに好適な素材であること。これら特徴は、廃棄物処理が難しくなっている昨今、ゴムなどリサイクルしにくい素材と比較して従来以上に評価される可能性があるとみている。さらにコンパウンド会社として、塩ビに配合する可塑剤やフィラーについてもバイオマスや天然物由来を活用する技術を開発中。石油への依存度を下げる持続可能な生産モデルに力を注いでいる。
 石油由来のエチレンが43%とはいえ、塩を電気分解するためにもエネルギーを要し「塩だから環境に良い」と一概には言えないだろう。しかし海洋プラスチックごみ問題については、廃棄物をしっかり管理し、リサイクルすることで解決につながる部分も多い。そういった狙いで建材関係の工業会との協業などによって、廃材をマテリアルリサイクルするシステムの構築など意義深い活動も進んでいる。サーマルリサイクルについても高塩素バイパスシステムなどが実用化され、塩ビを含む廃プラスチックにも適用しやすくなっている。今だからこそ「環境にやさしい塩ビ」の認知度向上を期待したい。

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