日本人は総じて気候変動に対する問題意識が低い国民のようだ。フランスに本社を置く市場調査会社のイプソスが、28カ国の消費者合わせて2万人を対象に行った調査によると「気候変動対策のために行動を変えた」と回答した割合が最も低かったのが日本だった。
 日本で「行動を変えた」と答えたのは31%、ほぼ半数の47%は「何も変えていない」と回答した。何も変えていないと答えた人が3分の1を超えた国は、日本のほかにはロシア、オランダ、米国の3カ国しかない。
 なお「行動を変えた」と回答した割合が最も高い国はインドで88%。次いでメキシコとチリの86%、世界最大のCO2排出国である中国は85%が行動を変えたと回答している。
 日本の国民1人当たりの排出量は消費ベースで約10トン。G20のなかで5番目に多い。中国の2倍以上、インドとの比較では8倍以上になる。国としてCO2排出量に占める割合は3・5%にすぎないのだから、排出量の多い中国や米国、インドなどが削減すればいい-などと言って澄ましてはいられない。
 地球環境戦略研究機関(IGES)の最新の研究成果によると、平均的な日本人の排出量は年間7・6トンあるという。国連気候変動政府間パネル(IPCC)の「1・5度C目標」を達成するには50年までに0・7トンと、10分の1にまで削減しなければならないことが分かった。さらに食・住・移動、それぞれについて排出量削減に効果的な行動変容を示した。
 食については、肉の消費からの排出量が多い。量的には食料需要に占める肉の割合は5%にすぎないが、これにともなう排出量は食全体の23%にもなる。単位量当たりの排出量が多いためだ。同じたんぱく源となる豆なら単位量当たりの排出量は9分に1近くに抑えられる。菜食に努めることと、食べ過ぎをやめることが気候変動対策に有効だという。
 住に関しては、電力を石炭火力から再生可能エネルギーに代えることが最も効果的だ。移動では自動車からの排出が80%も占める。稼働率が低いマイカーをやめてライドシェアを進めることや、電気自動車の普及、職住接近により移動距離を短くすることなどが求められる。
 もっとも、こうした排出削減策がすべての日本人で可能なわけではない。過疎地域に住む人はマイカーなしには暮らしていけないだろう。排出削減につながるライフスタイルを選択できる環境づくりこそが重要だ。国民一人ひとりの気候変動問題に対する意識を高め、対策を加速させることにつながろう。

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