今月、制度創設から8年目を迎えた機能性表示食品。特定保健用食品(トクホ)よりも手続きにかかるコストや時間の負担が軽く、一定の機能性が表示できる点をメリットとして始まり、当初こそ様子見のメーカーが多かったものの、中小を含めて参入する企業は年々増え続けている。新型コロナウイルス感染拡大の影響で健康への意識が高まったのに加え、巣ごもり消費で通信販売を中心に需要が伸びたことも、その傾向に拍車を掛けているといえよう。

 4月19日時点の機能性表示食品の届出は合計5328件に上る(撤回含む)。制度がスタートした2015年度の届出は307件だったが、16年度は620件に倍増。20年度には初めて1000件の大台に乗り、21年度は過去最高の1310件に達した。国の審査や許可が必要なトクホの21年度の許可は16件にとどまる。個別審査がなく、ハードルが低くて入りやすい機能性表示食品に重点を置いていることがうかがえる。

 機能性関与成分としてはGABAが変わらずトップ。ここ1年だけでも、さらに大きく数を伸ばし、届出商品数は累計で600を超えた。血圧の上昇抑制や抗ストレスなど訴求できるポイントが多いため、さまざまな商品で活用が進んでいる。続いて食後の血糖値の上昇を穏やかにする難消化性デキストリンが429件。以下、中性脂肪を減らす機能が報告されているDHAやEPA、目の調子を整えるルテインと続く。

 健康・美容・医療ビジネスに関するコンサルティングを行う薬事法ドットコムの集計によると、これまでの届出企業の上位には健康食品や化粧品のODM・OEM(設計・製造受託)を手がける東洋新薬を筆頭に、伊藤園や江崎グリコのほか、日本水産、アサヒ飲料、ファンケルなどが名を連ねる。

 加えて既存商品の付加価値を上げるために利用される事例が増えていると指摘。届出数が上位の会社のうち、この1年強の間に、化粧品や健康食品の原料製造などを展開する常磐植物化学研究所や森永製菓などが大きく届出数を伸ばしているという。

 今や健康食品の主流となりつつある機能性表示食品。コロナ禍に対する不安は払拭されておらず、高齢者層を中心に免疫などに対する関心の高い状態は続いており、今後も着実な市場拡大が見込まれている。一方、市場の広がりはメーカーにとって開発競争のさらなる激化を意味する。他商品との差別化を図るブランド戦略を打ち出しながらユーザーを増やしていく工夫が、これまで以上に問われることになる。

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