中国の浙江省でこのほど、世界の化学企業が集まる中国国際石油化工大会(CPCIC)が開かれた。全体会議では「現在は新型コロナウイルスや自国第一主義が蔓延する危機の時代」との認識で一致。産業発展のため一層の国際連携の重要性を確認した。経済回復が進む中国への期待の高さもうかがわせた。恒例の「日中化学産業会議」は見送られたが、双方で情報交換を続け、日本も国際協調で重要な役割を果たしていきたい。

 CPCICは今回が11回目。中国石油・化学工業連合会(CPCIF)や国際化学工業協会協議会(ICCA)の手によって開かれてきた。毎年、世界の石化産業の現状や海洋プラスチックなど社会課題が取り上げられ、地方政府と外資企業の交流の場にもなっている。

 今年はコロナ禍で海外企業の首脳の参加こそなかったが、中国石化(SINOPEC)やエクソン・モービル、ダウ・ケミカル、サウジ基礎産業公社(SABIC)の現地代表が参集。化学産業の未来を展望した。

 新型コロナの世界的な感染拡大、保護主義の台頭による世界経済の混迷・分断が危惧されるなか、出席者からは一様に国際的連帯の必要性が強調された。CPCIFの李寿生会長は、保護貿易が世界の経済発展を阻害しているとし、「経済のグローバル化、国際協調こそ共同発展の唯一の道だ」と力説した。

 分科会として続けられてきた「日中化学産業会議」は今回なかったが、日本化学工業協会、石油化学工業協会の両会長がビデオメッセージを寄せた。

 日化協の森川宏平会長は、日中が緊密な連携を継続しながら双方のレスポンシブルケア活動の向上、世界的な課題であるプラスチックごみの汚染削減を前進させたいとの考えを示した。

 石化協の和賀昌之会長は、社会が激変するなか、人々の安定的な生活を確保するには石化産業による素材供給が不可欠と強調。安定供給責任、国際競争力向上、温暖化問題など世界規模で直面する課題解決への貢献に努めると述べた。

 両会長が日中の連携、共通課題への対応を通じてアジアや世界の化学産業の持続可能な発展に貢献していくと口を揃えたことを歓迎したい。日本は生産現場の安全管理、資源循環型社会の構築に資する豊富な知見やノウハウを提供できる。社会課題の解決を通じた日本なりの国際協調があるはずだ。

 とりわけ中国は行き過ぎた環境対策や安全規制を敷く傾向がある。対話を通じ、うまく軌道修正していくことも、化学産業における日本の存在感の示し方の一つだ。

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