4月から国内で製造されるすべての加工食品の原産地表示が必要になった。表示制度は2017年9月にスタートし、今年3月末まで義務化への経過措置期間だった。原材料費、物流費にエネルギーコストのさらなる上昇が重なって食品の値上げが実施されるなか、消費者が価格に見合った品質の製品を安心して選択できる機会の広がりと、誰にも分かりやすい制度であることが求められる。

 この表示制度では、使用した原材料に占める重量割合の最も高い原材料が対象で、容器・包装に表示する。生鮮食品の場合、原則、国別に重量順。加工食品は一番多い原料の製造地を表示する。4年半の経過措置期間中に大半の食品メーカーの表示切り替えが進んでいる。原料原産地表示は以前から、22食品群と農産物漬物など4品目に義務付けられていたが、加工食品の1割程度だった。

 すべての国内製造品に広げたのは、消費者調査により、多くが原料原産地情報を参考とする購入に関心を持っていることと、農林水産業にとって安心な国内原料の使用を表示できるメリットがあり、検討が進んだ。表示は生鮮品の豚肉肩ロースの場合、原産地欄に「国産」、果実加工品の場合、原材料名欄に、いちご「栃木県産」などとなる。

 しかし、この制度は消費者への情報提供の点で「開かれた」と言えるのだろうが、表示方法が非常に複雑で、消費者側も情報を受け取るには制度への知識を持っていないと理解が難しい。例えば「大括り表示」が認められ、表示パターンも複数ある。3カ国以上の輸入品を使ったソーセージを例にすると、原料原産地名欄に輸入「豚肉」あるいは原材料名に豚肉「輸入」と表示してもよいことになっている。国産と3カ国以上の輸入の間で重量順の変動が見込まれる場合、原料原産地名欄に「輸入」または「国産」(輸入が多いケース)としてもよい。輸入農産物である原材料が小麦や砂糖などの加工品の場合に、原材料名欄の表示は麺・パン類の小麦粉「国内製造」となり、どこから輸入した農産物を使用したのか、容器包装からは情報が得られない。また2番目に量の多い原材料は産地を表示しなくてもよい。一方、加工食品として輸入したものは別途、原産国名の表示義務があるため、この制度の対象でない。

 大手食品メーカーでは、表示欄スペースに記入できない情報をウェブ上で公開しているところも多い。公開していない小企業の情報を得るには、電話など時間、手間、費用もかかる。分かりやすさを追求した表示への、さらなる改訂を望みたい。

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