内閣府は「バイオ戦略2020」に掲げた重要施策「地域バイオコミュニティ」に、北海道、鶴岡、長岡、福岡の4地域を初めて認定した。国が実施する施策の優先的な適用や意見の反映などを、最大限に活用可能となる。応募した東海地域は今回登録状態になり、来年の認定を目指す。バイオコミュニティは、循環型経済社会を拡大させるバイオエコノミー実現に不可欠である。その形成・発展には、海外事例にみられる要件を揃えなければならず、乗り越えるべき課題も多い。形骸化させることなく、地域の特色を生かした研究開発成果の事業推進に向け、産学などの柔軟な地域連携システム、投資呼び込める魅力が根付くことを望みたい。

 バイオ戦略2020では市場領域ごとに目標を設定し、バックキャスト方式で取り組みを決めた。「持続可能性」「循環型社会「ウエルネス」を戦略共通のキーワードに、バイオ製造、一次生産(農林領域)、健康・医療の3領域について2030年時点で総額92兆円の市場規模を目指している。18年の約1・5倍に当たる。市場創出を担うバイオコミュニティを、同戦略では「地域」「グローバル」の2タイプ整備する。グローバルバイオコミュニティーは東京圏・関西圏を想定、22年3月までに認定する予定。

 産業振興・創出のため「バイオ戦略大綱」が日本で初めて策定されたのが02年。そして08年には「ドリームBTジャパン」、さらに技術の進展や社会の変化に合わせ、19年にバイオ戦略2020の元になる新戦略を策定したという経緯がある。毎年見直しが行われるという。00年代には、地域連携の希薄さや、大学の研究成果に頼りすぎる傾向などから抜け出せず、リーマンショックによる日本経済への深刻な影響もあって、バイオによる新産業の創出が目標通り進まなかった。

 地域バイオコミュニティが発展していくには、中核の大学・研究機関、地場産業との結びつきが強いこと、支援組織があり、地域の研究開発と運営を総括してマネジメントできる人材、ユニークな取り組みなど、数多くの要件が求められる。認定された4拠点は、アグリ・機能性食材分野に強く、それらを満たす素地がある。一方、基礎研究成果を応用につなげ、他の成果を組み合わせるなどして事業にする先見性ある目利き人材の少なさ、データ連携を推進し使える情報の付加価値化、優秀な研究人材の呼び込み、国際企業のラボ誘致などで、日本は海外より遅れている。認定地域にとって、これまでどこも成し遂げられなかった挑戦となることだろう。

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