いくつもの懸念材料が山積するなか新年度がスタートした。原油をはじめとした原材料の高騰に加え、ロシアのウクライナ侵攻に端を発した原材料ひっ迫やサプライチェーンの混乱、急速に進む円安にも注意が必要だ。これらは化学各社の事業計画に影響しかねず、今年度の業績予想も慎重にならざるを得ない。製品価格への転嫁を進めるとともに、原料の複数購買、ソース転換・多様化を、さらに推し進める必要がある。想定外の事態にも耐え得る体力が一層問われてくる。

 東日本大震災では、サプライチェーンが寸断されるなど化学産業にも大きな影響が及び、安定供給を図るため各社は早急な対応を迫られた。3年目に入っているコロナ禍でも同様にサプライチェーンの混乱を招き、経済活動は停滞した。そしてウクライナ情勢により、これらの課題が改めて浮き彫りになった。

 また先ごろの福島県沖地震にともなう火力発電所の停止で、電力問題が改めてクローズアップされた。振り返れば11年前の福島第1原子力発電所の事故で計画停電が実施され、省エネ志向が一気に高まった。電力融通のため送電網整備の必要性が叫ばれたが、再生可能エネルギーの導入機運が高まるなか、カーボンニュートラルの方向性を加味した対策が必要になっている。

 各社は過去を教訓に原料、サプライチェーン、電力の安定供給などリスク対応の見直しを進めてきた。グローバル展開が進む企業ほどサプライチェーン崩壊がもたらす影響は大きく、原料ソースの多様化なども含めて見直し機運が高まった。幅広い分野で危機管理体制が強化されたことは明らかである。

 コロナ感染対策の一環で本社機能や営業部門などはテレワークが普及、工場などモノづくり現場での工夫も進む。自動化、多能工化などの取り組みを一層進め、ウィズコロナ・アフターコロナ時代に対応した体制をいち早く築くことが肝要である。今後、さらにAI(人工知能)やロボットを駆使した第4次産業革命をにらんだ取り組みが必要になってくるだろう。

 まん延防止等重点措置が解除されて、外食産業や旅行業などを中心に個人消費の盛り上がりが期待される。一方で海外の感染状況は衰えをみせず、さらに新変異株も確認されている。日本の感染者数減少にいたっては一進一退の状況である。今は「第7波」をにらみながらウィズコロナを模索していく段階である。過去に習って危機管理体制を今一度盤石にし、あらゆる事態に即応できる体制を構築しておくことが持続成長に欠かせない条件になっている。

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