コロナ禍を受けてリモートワークが常態化した「ニューノーマル時代」。それに即した事業継続や業績の維持・拡大、顧客との接点強化などが求められ、ICT(情報通信技術)への投資が拡大している。富士キメラ総研によると事業改革のためのICTソリューションの国内市場は、2025年度に19年度比2・2倍の1兆4593億円になると予測される。このうちコロナ禍による上乗せは3095億円。ファイル・コンテンツ共有サービスなど、リモートで基本的業務を遂行するのに必要なソリューションが伸びている。バックオフィス領域は、政府が推進する「脱ハンコ」を受けてペーパーレス化関連ソリューションが伸長。25年度に同2・5倍の1269億円に拡大する見通しだ。

 12日の参院本会議でデジタル改革関連6法が可決、成立した。9月にデジタル庁が創設される。国の情報システムを統括する強力な権限を持つ「デジタル庁設置法」、デジタル社会を目指すうえでの基本理念などを定めた「デジタル社会形成基本法」、個人情報保護法や行政手続きにおけるハンコ廃止に必要な「デジタル社会形成整備法」、マイナンバーと預貯金口座を紐付けし、災害時に迅速に現金給付できるようにする「預貯金口座登録法」「同管理法」、自治体ごとに異なる行政システムを統一するための「地方自治体情報システム標準化法」-で構成される。

 今年2月に音声SNS「クラブハウス」で開催された勉強会で、平井卓也デジタル改革担当大臣は「米国や中国は『置いてきぼりになる人が出ても仕方がない』というスタンスだが「誰一人取り残さない』のが日本のデジタル化」と話した。「ガバメント・アズ・ア・スタートアップを掲げてデジタル庁立ち上げに着手したが、スタート後はガバメント・アズ・ア・サービスになる」とサービスの重要性を強調する。

 またデジタル庁が求める人材として「日本人の人生観、危機感、使命感を共有できる人」を挙げる一方「人を増やし組織を大きくするより、仲間を増やせば社会全体のデジタル化に貢献できる」とし、協力者(パートナー企業)やその周辺のフレンズを広げていく考えを示した。

 司令塔となるデジタル庁の創設によって行政手続きの大幅な簡素化・省力化、政策の迅速な立案・実行も期待される。脱ハンコにとどまらず、これまで以上に官民が連携してデジタル化を推進することで、日本の産業が大きな競争力を獲得し、世界をリードすることを大いに期待したい。化学をはじめ製造業も有力なパートナーになり得る。

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