2030年までの達成を目指し、国際社会が地球規模で取り組むべき目標として15年の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、もはや企業にとって避けて通れないテーマとなっている。日本の化粧品・日用品メーカーにおいても、SDGsを軸にした企業活動が本格化している。

 例えば、これからの季節に使う機会が多い日焼け止め。SDGsの17あるゴールのうちの一つ「海の豊かさを守ろう」を見据え、技術革新が進む。昨今、世界中の海でサンゴが白化し死滅する現象が問題視され、地球温暖化による海水温上昇などの環境要因だけでなく、一部の国や地域のビーチでは特定の成分を含む日焼け止めの持ち込みや販売を制限する動きもある。

 環境とビジネスの両立を探る継続的な取り組みが求められるなかで、花王は傘下のカネボウ化粧品の日焼け止めブランド「ALLIE」(アリィー)の処方を2月に改良。一部ビーチの規制に配慮した設計によって世界的な動きにいち早く対応した。日本国内を皮切りに、22年中には台湾やタイ、マレーシアなどアジア6カ国・地域に投入。24年には中国でも展開する。

 ロート製薬も、日焼け止め「スキンアクア ネクスタ」シリーズで環境に配慮した処方と同時に、高い紫外線防御機能と使用感の良さを追求。海外の一部で規制されているメトキシケイヒ酸エチルヘキシル(オクチノキサート)やオキシベンゾンといった紫外線吸収剤をはじめとする成分を抜くことに成功した。

 コーセーは、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルや酸化チタンなど、日焼け止めに含まれる代表的な7種の紫外線防御成分について、環境濃度でサンゴの成育に影響を与えないことを確認した。沖縄のサンゴ養殖の専門家と連携し、造礁サンゴに対する影響を適切に評価できる実験系を構築することで明らかにしたという。

 調査会社のインテージによると、20年に3割に満たなかったSDGsの認知率が22年1月には8割まで上昇。昨年の第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)によって環境対策を加速しなければならないとの認識は一段と広がり、浸透が遅れていた女性中高年層の間でも認知度が拡大しつつある。

 SDGsに関する記事やニュースは、ここ数年でさまざまなメディアに取り上げられるようになった。人に地球にやさしい製品の展開によって消費者を巻き込み、いかにグローバルで成長領域を広げられるか。積極果敢な化粧品・日用品業界の今後の動きに期待が高まる。

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