東京臨海部において自動運転の実証実験が始まった。内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一環で、一般道における交通インフラからの信号情報や高速道路の合流支援情報などを活用した「インフラ協調型技術」を検証する。国内外の自動車・部品各社、大学など28機関が参加。使用する自動運転車も最終的に100台程度となる見込み。世界的大都市の実交通環境下での公道実証は類を見ない。その成果が注目される。
 交通環境が複雑な一般道や交通量の多い高速道路では、車両に搭載されたセンサーのみで自動運転を実現するのは技術的に難しい。そのため道路側に設置されたセンサーや無線装置といった交通インフラから提供される信号情報や渋滞情報、本線合流支援情報などを活用したインフラ協調型技術の検討が必要となっている。
 SIPでは、第2期として自動運転の適用範囲を一般道へ拡張するとともに、自動運転技術を活用した物流・移動サービスの実用化を推進する。実証実験では、実交通環境下における無線通信による信号情報利用の有効性をはじめ、高速道路での本線合流において、車載センサーを補完する路側センサー情報による走行支援の有効性を確かめる。また磁気マーカーによる自動操舵やバス専用レーンと公共車両優先システム(PTPS)による定時運行の向上など、運転自動レベル4相当の次世代型交通システム(自動運転バス)を実交通環境下で検証する。
 臨海副都心地域と羽田空港地域では、高精度3次元地図情報やITS(高度道路交通システム)無線路側機によって信号灯火色情報などを提供する環境を整えている。また羽田空港と臨海副都心を結ぶ首都高速道路では、ETC2・0路側無線装置によって本線走行車両に関する情報や、ETCゲート開閉に関する情報を自動運転車に提供するための環境を構築する。羽田空港では公共交通システム用の磁気マーカーやPTPS、仮設バス停、バス専用レーンなどを整備していく方針。
 実験期間は2021年3月末まで。交通インフラや参加者の準備が整い次第、順次実施する方針だ。羽田空港地域や羽田空港と臨海副都心などを結ぶ首都高速道路などについては、交通インフラが整う今春からの開始を予定する。
 自動運転は次世代クルマ社会におけるキーテクノロジー。技術の標準化は必須だ。その意味でも国際的にオープンな産学官連携の公道実証実験は、国際標準活動に向けた取り組みとして期待される。

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