東南アジア3カ国で強権政治が続いている。きょう2月1日、国軍によるクーデターから丸1年が経つミャンマーでは、抵抗する民主派との終わりの見えない内戦状態が続く。そのミャンマーを年初に訪問したASEAN議長国であるカンボジアのフン・セン首相は独裁体制を敷き、人権弾圧などを強めている。コロナ禍を経て経済的・社会的格差が一段と広がるタイでは、軍政の流れをくむプラユット政権と王室に対する国民の不満が高まっている。強権による政治安定は見せかけに過ぎない。ソーシャルメディアなどの発達で、情報は瞬時に世界を巡る。国際社会は圧政に苦しむ市民を支援するとともに、分配こそ国の発展・成長の礎というメッセージを発し続ける必要がある。

 ミャンマーでは昨年の軍事クーデター以降、混乱が収まる気配がない。身柄を拘束中の民主化指導者であるアウンサンスーチー氏に対し年初、小型無線機を不正に輸入した罪などで禁錮4年の判決を言い渡すなど、民主化の芽を摘むのに躍起になっている。国軍総司令官は、抵抗勢力との和平交渉に力を入れると公言しながら今年に入っても空爆や砲撃をやめず、軍事政権を正当化するのに必死だ。

 そのミャンマーを年初にカンボジアのフン・セン首相が訪問した。今年、カンボジアはASEAN議長国。フン・セン氏を迎えれば「国軍統治を承認したと受け取られかねない」との批判もあるなかで強行した。クーデター以降、外国の首相が訪れるのは初めて。そのフン・セン氏は37年間も首相の座にあり、これまで最大野党を解党させるなどやりたい放題。コロナ禍を理由に非常事態宣言法を成立させ、報道規制強化や通信傍受なども盛り込み、人権を抑圧する動きを強めている。

 一方、タイでは2014年のクーデター以降、元陸軍司令官のプラユット氏が首相を続けている。ただ親軍派の最大与党内で対立が相次ぎ、一枚岩ではないようすが報道されている。来年3月に下院が任期満了を迎えるが、政権基盤の不安定化によって満了前に解散・総選挙を迫られるのではとの観測も出始めた。プラユット政権は、コロナを背景に非常事態期間の延長を繰り返して反政府デモを封じているが、政権基盤が揺らげば反政府デモが再び激化し、混乱が広がる可能性もある。

 絶大な権力者は、常に自制し、国を憂い、国の発展と国民の豊かな生活のために力を尽くす使命がある。タイのプミポン前国王やシンガポール建国の父、リー・クアンユー氏のようなお手本を、なぜ見習おうとしないのか不思議でならない。

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