次世代電池開発が活況を呈している。リチウム硫黄電池やナトリウムイオン2次電池(SIB)、空気電池など、種類はさまざまだが、やはり筆頭に挙げられるのが全固体電池だろう。電池メーカーはもちろん多くの化学メーカーも全固体電池向けの材料開発にしのぎを削っている。

 全固体電池が、なぜ注目を集めるのか。自動車メーカーが次世代電動車(xEV)への搭載を公言しているからに他ならない。固体の電解質を用いた全固体電池ならリチウムイオン2次電池(LiB)に比べ圧倒的に安全性が高まる。また5ボルト級の電圧を持つ正極材を適用する場合、固体電解質ならLiBの電解液のように劣化する心配もない。電位の高い正極材や金属リチウム負極などと組み合わせ可能なため、電池性能の飛躍的向上も夢ではなく、さらなる航続距離延長につながる。

 安全性と性能の向上だけではない。自動車メーカーが全固体電池にこだわる大きな理由の一つはシステムコストの低減にあるようだ。LiBの動作温度はマイナス20~プラス50度C程度。高容量化が進む車載用途では、水冷の温度管理システムが必須となる。一方、マイナス40~プラス100度Cほどの広い動作範囲を持つ全固体電池なら高温環境にも耐えられるため、管理システムに用いる冷却パーツの簡素化が可能となる。ある自動車メーカーは、同システムにかかる費用が現状比で半減するとの見方を示しており「全固体電池を使用する最大のメリット」と強調する。

 電池業界にとって自動車向けビジネスは最大の関心事。自動車メーカーの開発方針に自社の事業を連動させることは当然だが、すべての電池が全固体電池に置き換わるわけではない。自動車メーカーが自ら示しているように、電池には最適な使用法があることを忘れてはならない。

 例えば車載LiB最大手の中国CATLが開発を進めるSIBは、5分程度でスマートフォンの満充電が可能といわれており高い出力特性が魅力だ。しかしLiBに比べエネルギー密度が劣るため、現状では同電池単体で電気自動車(EV)の動力源になり得ない。そこでCATLはLiBとのワンパッケージ化を想定する。エネルギー密度不足をLiBで補いながら、SIBの持つ高出力と低温特性を融合させる意向を示している。

 電池は使用する材料の「すり合わせ」や「組み合わせ」で性能が決まる。そして一つの電池だけでは、すべての特性を満たすことのできない代物でもある。使用環境や用途に応じ、今後は電池同士の組み合わせも念頭に置いたシステム開発に期待したい。

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