国土交通省の「海における次世代モビリティに関する産学官協議会」が同モビリティの利活用に関する方針をまとめた。ドローンなど小型無人機の開発実用化が進むなか、水産業や海洋インフラ、離島物流など海域での社会実装を促進する。日本の沿岸・離島地域は高齢化率が全国平均を約10ポイント上回るとともに人口が減少。全国の漁村集落のうち3分の2が過疎地域となるなど高齢化・過疎化が深刻化している。また港湾施設は老朽化によって点検やメンテナンスの必要性が高まっている。これら社会的課題の解決に向け、海洋においても次世代モビリティの導入進展が予想される。

 海の次世代モビリティとは、ASV(小型無人ボート)やAUV(自律型無人潜水機)、ROV(遠隔操作型無人潜水機)を指す。ROVは遠隔操作で水中を潜行でき、一般的には船上・陸上の制御装置と無人潜水機の間をケーブルを介して接続し、水中の映像や情報をリアルタイムで船上に伝送する機能を持つ。マニピュレーターにより海底で作業できるものもある。

 AUVは水中への潜航から水中の航行、水面への浮上までを全自動で行う機能を有する無人潜水機。潜航前に機体へインプットしたプログラムに基づいて自律的に観測計画を遂行する。また水面からの潜航深度や水底からの高度など、周囲の状況を把握するためのセンサー類を有し、水底や水中障害物への接触を避けながら自律航行が可能。一方、ASVは遠隔操縦または自律航行により制御され、水上を航行する小型船舶。取りまとめでは主として総トン数20トン未満の小型船舶、ミニボートを検討対象としている。

 これら次世代モビリティの導入により有人作業の省人化・効率化、危険な潜水作業の代替、広範囲・長時間・水深の深い場所での作業が可能となる。さらには高齢化・過疎化による担い手不足の解消をはじめインフラ管理や海域の自然環境の維持・保全にも役立てる。すでに水産業では、ROVを用いた定置網の点検・清掃やAUVやROVを用いた生簀管理、ASVによる海水のモニタリングなどが実用化されている。また将来的な拡大が見込まれる洋上風力では監視・点検、機材・工具などの搬送のほか、ドローンの補完や渡り船といった離島物流の実証実験が行われている。

 社会実装にはユーザー視点での製品・サービス開発が不可欠だ。国交省の取りまとめでは必要な機能とともに日常の使用に耐え得る操作性や耐久性、利用可能な価格の必要性を挙げられた。素材産業には、これら課題の解決へ貢献が求められる。

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