台風シーズンを迎えた。気候変動の影響により、今年も激甚な自然災害の発生が懸念されている。防災・減災、国土強靱化に向け、しっかりと体制を整えることが求められる。
 昨年は、9月9日の台風第15号が首都圏で記録的な暴風となり、千葉県市原市ではゴルフ練習場のポールが倒壊して民家に直撃するなど大きな被害が発生した。10月12日には過去最強クラスの台風第19号が襲来。広範囲で記録的な大雨となり、堤防の決壊による浸水や、土砂などによる甚大な被害が発生した。静岡県や関東甲信越、東北地方では経験したことがない記録的な大雨となり、首都圏を貫流する多摩川、荒川でも浸水被害が発生し、利根川、荒川の本川も決壊寸前となった。
 こうした状況を背景に今年1月、国土交通省は「南海トラフ巨大地震・首都直下地震対策本部」と「水災害に関する防災・減災対策本部」を統合し「国土交通省 防災・減災対策本部」を設置した。「命と暮らしを守る防災・減災」をスローガンに検討を進め、7月に大臣プロジェクトとして「連携」「国民目線」をキーワードとした政策をまとめている。
 社会全体で備える防災意識社会の構築を図るため「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト」を策定し、その意識を持続させていくことにより「災害列島」という宿命を持つわが国で、総合力で災害を克服する社会を実現するのがコンセプト。そして災害から国民の命と暮らしを守るため、行政機関、民間企業、国民一人ひとりが意識・行動・仕組みに防災・減災を考慮することを当たり前としていく。国民目線の分かりやすい対策の推進や連携強化を掲げた。
 7月に閣議決定した「骨太方針2020」では防災・減災、国土強靱化対策を「国の重大な責務」と明記した。3カ年緊急対策(2018~20年度)後も中長期的な視点に立ち、具体的KPI(数値)目標を掲げて計画的に取り組むため、国土強靱化基本計画に基づいて必要な予算を確保し、災害に屈しない国土づくりを進める方針だ。実効性のあるものにしてほしい。
 すでに国交省では、荒川の堤防決壊時にどうなるのかをフィクションドキュメンタリー動画で紹介している。銀座や東京駅も浸水する可能性があり、水が引くまで1週間近くかかる。インフラが止まり、首都が機能しなくなると警鐘を鳴らす。首都圏は水害や地震など自然災害に脆弱である。災害リスクに対する備えと対策を進めながら、ウィズコロナ、アフターコロナのなかで日本経済を再び活性化させなければならない。

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