新型コロナウイルスが蔓延するなかで物流の重要性が改めてクローズアップされている。政府が4月7日に発出した緊急事態宣言下においても事業の継続が求められる業種の一つに位置づけられ、国民の安定的な生活確保、社会の安定維持を支えている。ただトラック業界ではドライバー不足がいぜん深刻だ。巣ごもり消費でインターネット通販の急増などもあり、今後の需要対応に支障が出るケースも想定される。迫り来る物流崩壊の回避へ向けて、現場での感染対策の徹底はもちろんのこと、中長期視点に立った強い事業基盤の構築が急がれる。

 トラック運送は国民の生活や経済活動を支える重要なインフラで、国内貨物輸送における分担率がトンベースで約9割、トンキロベースでは約5割に達する。社会の安定の維持の観点から、緊急事態措置の期間中にも最低限の業務の継続が求められている。また新型コロナウイルス感染症の拡大防止の取り組みを徹底しなければならない。

 全日本トラック協会がこのほど「新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」を策定した。事業所の立地や運行形態などを十分に踏まえつつ、感染予防対策の体制、健康管理、通勤、事業所での勤務、休憩・休息スペース、車両・設備・器具、運行中など細部にわたって各事業者の取り組むべき対策を明記した。事業所内、事業用車両、運行経路、立寄先や通勤経路を含む周辺地域において「3密」が生じてクラスター感染発生リスクの高い状況を回避するため、最大限の対策を講じる必要があるとしている。

 他方、深刻の度を増すドライバー不足は構造的問題であり、中長期的取り組みが不可欠となる。高齢化も進んでいる。年齢別構成をみると50歳代以上の比率が約40%。今後、大量の定年退職者が出ると予想され、2020年代後半には25万人超の不足が生じるとの試算もある。

 現状では運送事業者各社が現存のドライバーの休日出勤や残業などによって輸送ニーズに対応している。事務職、管理職がドライバーを兼務しているケースが少なくないという。ただ働き方改革にともない24年からは時間外労働を年間960時間以内に抑える必要があり、これまで以上に配車が難しくなることが見込まれる。

 トラック輸送業界の維持・発展には、ドライバーの労働条件の改善や賃金上昇などにより、若年層を中心に人材を安定確保することが最重要課題なのは言うまでもない。併せて企業の枠を越えた共同輸送など物流効率化も、さらに推進していかなければならない。

試読・購読は下記をクリック

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

社説の最新記事もっと見る