大学が持っている優れた技術や知識、研究成果を利用し、より効果的に新製品・新技術を開発する産学連携。研究開発型企業にとっては自社の競争力強化のための有効な方法の一つだ。規模にかかわらず多くの企業が実践しており、最近では地域活性化の手法としても重要性が増している。連携を契機に地場産業を盛り上げていこうとする取り組みが活発化している。

 大阪ソーダは、ポンカン果皮に含まれる「ノビレチン」の機能性に着目して、2019年から愛媛大学大学院農学研究科の菅原卓也教授との共同研究を開始した。ノビレチンの抗炎症作用を、より効果的に高める成分を探索した結果、ノビレチンと河内晩柑果皮の特徴的な成分である「オーラプテン」の組み合わせが、各成分単独に比べ相乗的な効果を示すことを発見し、特許を出願した。この成分を配合したサプリメント「爽能柑」(そうのうかん)も商品化しており、自社通販サイトでの販売を始めた。生産量日本一を誇る愛媛県産のポンカンと、河内晩柑果皮粉末を原料に使用することで資源の有効活用を促進するとともに、同社の事業所が所在する地域産業の活性化に貢献していく。今回の研究成果を生かして今後、機能性表示食品の届け出も視野に入れている。作用機序の解明やヒト介入試験実施のため研究を継続する。

 第一工業製薬のグループ会社のバイオコクーン研究所(盛岡市)は、養蚕技術を活用して得られた「カイコ冬虫夏草」から認知機能を改善する新たな物質「ナトリード」を発見した。大阪市立大学、九州大学、岩手大学、岩手医科大学との共同研究の成果で、ナトリードが神経細胞の成長促進作用に加え、グリア細胞であるアストロサイトの増殖作用やミクログリアの抗炎症作用を持つことを明らかにした。カイコ冬虫夏草は、カイコの幼虫やサナギを培地として野外から採取した冬虫夏草菌(ハナサナギタケ)を育てて収載したもの。第一工業製薬は全国の自治体や大学との連携を図りながら、桑やカイコの機能解明、健康補助食品の研究開発、桑の植樹を含む養蚕業の復活・再生を目指していく。

 産学連携には決まったやり方があるわけではない。自社の目的に沿った連携方法を見つけていくことが重要だ。近年、企業活動においてESG(環境・社会・企業統治)やSDGs(持続可能な開発目標)への貢献が求められるなか、研究を通じた地域社会の発展への寄与とともに、地域社会との連携が重視されている。人材流出などに悩む地方の活性化の有益な手法になることを期待する。

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