産業機械・プラント関連機器メーカーがサプライチェーンの見直しや事業の再構築を迫られている。米中貿易摩擦に加え、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)によって各社の事業環境に不透明感が増している。従来のビジネスモデルにとどまらず、リモートメンテナンスなど新しい提案活動が重要となりそうだ。

 横河電機は、感染拡大にともなう世界的な移動制限によって燃料需要が大幅ダウンした影響で、石油精製プラント向けの対面営業型コンサルティングビジネスで苦戦を強いられている。その一方、社員の安全確保と業務効率化が可能なリモートエンジニアリングが拡大してきた。顧客への提供が進み、立ち会い検査も実施。リモートメンテナンス契約が増えている。

 月島機械は中国・上海市で受注した下水処理場が完工し、遠隔監視による試運転を5月下旬から開始した。通常の汚泥処理設備工事(汚泥脱水、乾燥、焼却)では指導員が現場に常駐する。ただ新型コロナの影響で派遣が困難となり、国内の在宅勤務環境での遠隔監視によって検収条件を満足するための運転確認を実施した。同社グループは現場業務のスマート化に向けた取り組みを加速し、重要インフラである上下水道事業の持続的な成長を狙う。

 日精樹脂工業は近年、射出成形機の世界的な需要増大を受けてグローバル規模で生産体制を拡充してきた。ただ米中貿易摩擦や新型コロナの影響で顧客工場への立ち入りが制限されるなか、IoT(モノのインターネット)活用のリモートメンテナンスを充実させる考え。また医療業界向け専用機の即納体制、各種特殊機の販売を強化し、事業基盤を固める。

 芝浦機械は射出成形機の拠点を日本、中国、タイ、インドに保有している。当面、急速な設備投資の回復が期待できないと予想しているが、新型コロナ収束後は働き方改革が進み、生産活動の自動化・省人化ニーズが強まると判断し、ロボットやIT分野に力を入れる。

 アズビルはマザー工場の新湘南工場を竣工させ、中国工場とタイ工場でのグローバル生産体制を充実させてきた。当面はプラントや建物などへの投資減少が見込まれるが、逆に生産管理の自動化・省人化ニーズが強まるとみて新需要を開拓する。

 今後の経済環境は予測し難いが、新型コロナのワクチン開発に1~2年必要とされる以上、対面型ビジネスは控えざるを得ない。その対応策の一つとしてリモートエンジや自動化・省力化など、先端技術を駆使した新たなビジネスに期待したい。

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