厚生労働省は5月から9月まで「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施する。職場の熱中症予防を徹底することを目的としたもので、労働災害防止団体などと連携して取り組む。具体的には、夏季の暑熱環境下における作業計画の策定、日よけや空調をはじめとした設備の導入、服装の工夫などの徹底を呼びかける。キャンペーンを通じて職場での熱中症予防に対する意識が高まることを期待したい。

 同キャンペーンは、中央労働災害防止協会、建設業労働災害防止協会、陸上貨物運送事業労働災害防止協会、港湾貨物運送事業労働災害防止協会、林業・木材製造業労働災害防止協会、日本労働安全衛生コンサルタント会、全国警備業協会労働災害防止団体などが連携する。2019年から3年連続の実施となり、とりわけ場所を問わずアクセスして学べる熱中症予防のためのオンライン教育用ツールを今回拡充する。

 熱中症は、高温多湿な環境下において体内の水分と塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻することなどによって発症する障害で、患者数は増加傾向にある。消防庁の統計によると、20年夏(6~9月)に熱中症で救急搬送された人の数は、全国で6万4869人だった。ピークだった18年から2年連続で減少したものの、17年以前に比べ高い水準にある。

 職場における死傷災害発生状況をみると、昨年(速報値)は死亡を含む休業4日以上の死傷者数は919人、うち死亡者数は19人。業種別では建設業と製造業の2業種が死傷者全体の4割強を占めた。また死亡者については製造業、建設業、清掃、と畜業の順に多く「休ませて様子をみていたところ容態が急変した」「倒れているところを発見された」など、管理が適切でなく被災者の救急搬送が遅れた事例が含まれているという。

 今年のキャンペーンでは、人体の熱収支に与える影響の大きい「湿度」「日射・輻射など周辺の熱環境」「気温」の3要素を取り入れた指標で、熱中症を発生させないために必要とされるWBGT(暑さ指数)値の実測と、その結果を踏まえた対策の実施、重症化させないために重要な熱中症が疑われる場合における適切かつ速やかな対応について重点的に呼びかける。4月を準備期間、7月を重点取り組み期間とする。今年も前年同様、新型コロナウイルス感染症予防対策と並行して熱中症対策を講じる必要がある。それだけに作業環境の整備はもとより、現場作業員の意識改革が求められることは言うまでもない。

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