気候変動対策や海洋プラスチックごみ問題などを巡って「プラスチック悪者論」が世間で吹き荒れている。化学業界は、プラスチックが省エネやフードロスの削減など人々の生活を豊かにするために欠かせない素材だ-という正しい知識の啓発に努めることはもちろん、資源循環の事業モデルを構築し、それを誰もが容易に確認できる仕組みづくりを急がねばならない。

 とりわけサプライチェーン(SC)のライフサイクルアセスメント(LCA)を可視化する制度設計については、国や業界団体、企業が一体となって取り組む課題であるとの認識が必要だ。

 世界的にプラスチック需要が増大する一方、廃プラ問題も顕在化してきている。サーキュラーエコノミーの形成は社会からの要請であり、その実現のためには中小企業なども簡易な計算方法で温室効果ガスの削減に取り組みやすくしたり、サプライチェーンにおけるリサイクル原料の使用比率や含有物質のトレーサビリティ(追跡可能性)を担保する仕組みが求められる。

 こうしたなか、デジタル技術を用いて再生プラ製品のリサイクル率やバリューチェーンを可視化する動きが出てきた。三井物産はサステナブル経営推進機構(SuMPO)と連携、来年4月にもLCAを可視化するプラットフォームの運用を始めたい考え。ブロックチェーン導入の取り組みでは、三井化学や旭化成が日本IBMと組んで資源循環プラットフォームの構築を図っている。丸紅も蘭スタートアップのサーキュライズと連携し、SC管理のプラットフォームを展開していく。

 製品ごとのCO2含有量や価値評価を「見える化」するといったLCAの測定・評価の重要性は石油化学工業協会も強く主張している。協会内にワーキンググループを設けたり、他団体と連携するなどしてLCA可視化の制度づくりで議論を主導してきた。

 石化協や各社では、消費者が物を購入する際に今後、価格やブランドに加えて環境負荷が選択基準となる時代が到来すると想定。化学業界を含めた製造業者は、製品のサプライチェーンを「見える化」し、社会に透明性を持って示すことが責務となろう。

 LCAの可視化は一つの正解があるわけではない。すべての製品ごとに統一的な基準を設けることは至難の業だ。いずれは一定の集約が必要になるのだろうが、まずは個々の取り組みを通じてLCAの概念を社会に浸透させ、取り組みに参加する企業にはインセンティブを与えることができないかなど、官民一体となって仕掛けづくりに知恵を結集すべき時に来ている。続きは本紙で

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

社説の最新記事もっと見る