綿やウールの紡績、製布を手がけるグンゼ、クラボウなど各社は、非天然繊維関連事業の育成に力を入れている。ただ化学繊維を祖業とする東レ、帝人といったメーカーに比べて「繊維の会社」という印象は、まだまだ強い。さらなる発展を遂げるためには非天然繊維関連事業の強化が不可欠だ。以前にも増して攻め手を繰り出し、事業ポートフォリオを変革することが求められている。

 グンゼの売上高の半分はアパレル事業だが、営業利益をみると機能ソリューション事業が6割超を占める。機能ソリューションは食品包装用フィルムや飲料・非飲料ラベル用シュリンクフィルム、OA機器向けエンジニアリングプラスチック、タッチパネル関連、吸収性組織補強材といったメディカル関連などで構成される。「当社の成長のカギを握るのが機能ソリューション事業」と廣地厚社長。その道に明るい佐口敏康代表取締役専務執行役員に社長のたすきを渡すことを決めた。今年6月以降、佐口新社長の下、取り組みを加速する。

 クラボウは技術研究所(大阪府寝屋川市)で、コア技術を組み合わせて新製品・新事業を生み出そうとしている。半導体の製造に欠かせない薬液の精密計測およびリアルタイム制御をはじめ、物の形状や位置を認識する目となるカメラとAI(人工知能)を活用した頭脳を組み合わせたロボットセンシング、再生医療支援といったライフサイエンス、そして繊維強化複合材料などの研究開発に従事している。芽吹き始めているものもあり、多くの花が咲くことが期待される。

 ウール大手のニッケ(日本毛織)も、さまざまな非繊維事業を手がけている。その一つである産業機材事業では、とくに海外での自動車および環境関連の拡大に取り組んでいる。不織布ビジネスでは、中国・江蘇省に有する工場で環境用高性能フィルターを増産するとともに、ごみ焼却施設向け製品の拡販にも努めている。また約1年前に資本業務提携契約を締結し、持分法適用関連会社化した不織布・フェルトの総合メーカー、フジコー(兵庫県伊丹市)を完全子会社化することを決定。相乗効果を最大化させ、他に伍していく。メディカル関連も重点育成分野に定めており、iPS細胞(人工多能性幹細胞)など向け3次元足場材料といった用途で使われる細胞培養用ゼラチン繊維基材の普及に励んでいる。

 日本の工業化・近代化に寄与した各社。100年以上にわたり脈々と受け継がれる挑戦者魂を発揮し、繊維事業に比肩、そして凌駕する新規事業を創出してほしい。

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

社説の最新記事もっと見る