「皮膚は健康のバロメーター」をテーマとするセミナー(佐藤製薬主催)がこのほど開催された。埼玉医科大学総合医療センター皮膚科の福田知雄教授が講師を務め、新型コロナウイルス感染症にともなう皮膚の症状について、講演を行った。皮膚と新型コロナ感染症との関連性は意外に思われるが、医師が治療戦略を立てるうえでも役立つ可能性がありそうだ。

 新型コロナ感染症では、発熱、咳、息切れ、呼吸苦、下痢、味覚障害といった症状が知られているが、患者の年齢や体質により「新型コロナ感染症の皮膚症状は早期診断、新型コロナ陽性患者のトリアージとそのリスク層別化に役立つ可能性がある」と福田教授は指摘している。日本皮膚科学会でも新型コロナ感染症と皮膚症状の関連性について注目しており、英ノッティンガム大学科学的根拠に基づく皮膚科学センター(CEBD)のニュースレターをホームページ上で紹介している。

 福田教授は2020年3月、新型コロナ病棟の患者88人のうち18人に皮膚症状が出ていることを注視し、イタリアの皮膚科医がまとめた論文など海外の文献をもとに講演を進めた。新型コロナ感染症による「凍傷様の肢端の皮疹、紫斑・多形紅斑様の皮疹は、無症状あるいは軽症の小児や若年成人の患者に認められる。対照的に先端部の虚血性病変や斑状皮疹は、より重篤な経過をたどる成人患者に多く見られる。発熱をともなう蕁麻疹(じんましん)は新型コロナ感染が確認されていない場合の初期症状であるため、診断上の意義がある」との見方を示した。

 スペインの新型コロナ患者の症例では、斑状丘疹型の皮疹が認められ、その半数でそう痒を訴えていた。同発疹は約9日間持続し、新型コロナ感染症のより重篤な経過と関連していたとしている。

 また、男性型脱毛症と新型コロナ感染にも言及。同脱毛症は男性ホルモンのアンドロゲンにより引き起こされるが、平均年齢58歳の白人を対象とする臨床研究によると、その39%が重度に分類された。

 これは「新型コロナウイルスにはアンドロゲンが関与するいくつかの経路がある。アンドロゲンを制御するTMPRSS2プロテアーゼは新型コロナ感染に必要な細胞レセプターである。ウイルスのスパイクたんぱく質はこの酵素によって促進される。もう一つの関連性はアンドロゲンが免疫抑制作用を持つことから、アンドロゲンによる免疫調節である。実際、成人の新型コロナ患者には男性が多いことが分かっている」との知見も紹介された。

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