Beauty&Personal Care部研究グループ企画開発チームで化粧品原料の開発に携わる竹元依里主任も緊急事態宣言中は在宅勤務を余儀なくされた。同チームは国内で新型コロナウイルス感染者が増加し始めた3月に在宅勤務制度を利用。2班に分け、交代で出社していた。緊急事態宣言発令後は原則、在宅勤務となり、1日に1回、ウェブ会議システム「Teams(チームズ)」で業務報告や情報共有するなどしていた。5月下旬に解除されて以降、本社研究所(京都市東山区)に出勤できるようになったが、週に1、2日は自宅で仕事に励んでいる。

 自宅では実験を行えないものの、在宅勤務の利点を見いだすことができた。特許出願書類を作成したり、技術調査に従事したりと「在宅勤務ではこうした業務に取り組むためのまとまった時間を確保でき、集中して進めることができたのが大きかった」(竹元主任)という。

 働き方改革の一環としてすでに仮想デスクトップサービスを導入しており、家にあるパソコンから社内イントラネットにアクセスできる環境が整っていたことも在宅勤務するうえで有用だった。このほか、出勤時には研究開発の効率化が図られるとして、以前から利用していたコアタイムなしのスーパーフレックス制度を駆使し、混雑する時間帯を避けるなどすでにある制度を有効活用。「新型コロナ収束後も在宅勤務は続けたい」(同)と語るなど、よりよい働き方を追求する。

 メーカーは需要がある限り、製品を作り、供給し続けなければならない。製造現場はテレワークの導入が難しいが、同社では新型コロナの発生、まん延を機に利用できる職種にある工場勤務者も取り入れ始めている。約10年前に入社して以降、名古屋工場(愛知県東海市)で働き、原料・資材の取り扱いや有機合成プラントの工事などを担当するアシストチームの石浜和浩副主任はその一人。自宅で仕事を行ってみたが、「集中して資料作成に励めるなど能率を高められる」と、在宅勤務のよさを肌で感じることができた。在宅勤務しているのは工事にかかわる設計担当者や事務職員ら日勤勤務者。新型コロナが収束しても「在宅勤務制度を有効活用しようという機運が高まっている」(同)という。

 名古屋工場全体では、感染者を一人も出さないという意気込みで、各人が細心の注意を払いながらモノづくりに携わっている。工場勤務者は毎朝検温し、37度Cを超えた場合は出勤しないよう厳命されている。生産ラインに携わる従業員も工夫を凝らしている。プラントの運転状況などは計器室で確認しているが、会議室も使い、できる限り人と人の接触を避けている。勤務交代時には、対面ではなく電話で引き継ぎを行い、固定電話など共有の器具・備品を消毒するなど感染防止の徹底を図っている。

 新型コロナウイルスの世界的大流行により、ユーザーと対面できず、新製品の提案が思うように進まないなど悩まされることがある一方、在宅勤務をはじめ働き方改革に関する制度が進展したという側面もある。新型コロナをきっかけに、各種制度を活用する社員がさらに増え、自分自身に合った働き方を確立し、ひいては会社の発展につながるのか、今後も三洋化成の働き方改革に関する取り組みから目が離せない。 (池田旭郎)

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