住友化学は8日、新型コロナウイルス感染を鼻の呼気から診断できるセンサーを開発するイスラエルのベンチャー企業に開発資金の約7割を提供すると発表した。提供する資金は約1億円。同ベンチャーは臭気検知センサー技術を有し、住友化学は昨年12月に200万ドル出資(出資比率約12%)している。この技術を応用すれば、呼気からウイルスも検知できることを確認。すでにイスラエルの空港などで実証実験を開始しており、6月には病院などへ試験的な社会実装も見込んでいる。

 呼気からウイルスを検知するセンサーの開発を進めているのは、イスラエルのナノセント社。ケミレジスタと呼ばれる、物質の吸着など周辺の化学的環境に応じて電気抵抗値が変化する材料を搭載した臭気検知デバイスと、デジタル技術を融合させた新センサーの開発で注目されている。たとえば、排泄物の臭気データから体調変化や病気の兆候を読み取り、健康管理に役立てる体調可視化事業などが想定される。

 数ナノメートルの大きさの臭い物質を検知できるセンサー技術を活用し、数百ナノメートルの新型コロナウイルスの迅速な診断センサー開発につなげる。ナノセントはイスラエルや欧州の病院、高精度な検査技術を開発する企業とコンソーシアムを組み、実証実験を進めている段階。

 この生体を傷つけない非侵襲の即時判定できる簡便な診断方法と、PCR検査などのより高精度な方法を組み合わせれば、短時間・低コスト・高精度な感染検査が可能とみて実用化を急ぐ。住友化学では新型コロナウイルスだけでなく、将来懸念されるパンデミック対策にも応用可能とみており、次世代ヘルスケア事業の創出につなげていく。

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