新型コロナウイルスの陽性判定に使う抗原検査キットをめぐり、政府の規制改革推進会議がさらなる規制緩和を厚生労働省に求めている。焦点となるのは薬事承認を受けたキットの一般用医薬品(OTC)化。個人が薬局で買えるようにしたのに続き、さらに購入しやすい環境整備が必要とし、議論を開始する。一方、質の高いキットが必要との認識は一致しており、事業者へ対応を要請した。

 規制改革推進会議は22日、報告書「当面の規制改革の実施事項」を公表。「質の確保された抗原定性検査キットの利用環境の整備」という項目を盛り込み、課題を整理するとともに、今後の方針を示した。このうち、年内をめどに検討を始め、「結論を得次第、速やかに措置」としたのが同検査キットのOTC化だ。経済との両立、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、短時間で結果が判明する同キットを手軽に利用可能とすることが欠かせないと訴える。

 本来、薬事承認を受けた検査キットは病院などでしか使えないが、新型コロナウイルス感染症に関する特例措置として、これまで規制緩和が段階的に進んでいる。9月末には薬剤師の対面販売・説明を条件に薬局で購入できるように変更。無症状者の利用が問題ないということも明示した。ただ、「薬剤師がいないと買えない」「オンライン通販で購入できない」といった不便さを背景に必ずしも同キットは身近になりきれていない。そのため、「厚労省のアホな規制のために一般に使うことができない」(河野太郎前ワクチン接種担当相)との批判も飛び出している。

 厚労省も「広く入手できるようにするのが大切」(幹部)とするものの、OTC化に慎重な立場を崩さない。検査薬の場合、感染症については「個別の検査項目ごとに販売方法を含め慎重に検討を行う」(同省)としているためで、「むしろ陽性と分かった際にきちんと受診につなげていくことを制度化すべき」(幹部)と主張する。また、正しい使い方を徹底する観点からも薬剤師による対面販売を緩めることには消極的で、OTC化によるオンライン販売解禁にも警戒感を隠さない。

 ただ、同会議、厚労省ともに質が担保されていない検査キットが「研究用」として流通している事態を懸念していることは共通だ。薬事承認で一定の精度が確保されていないキットが出回ることで偽陰性などが続出するのは避けるべきだと一致している。

 このため、同省は消費者庁と連携し、薬事承認を受けていない検査キットを「研究用」として取り扱うことを自粛するように販売事業者に求める通知を22日付で発出。今後2~3カ月、様子を見たうえで、さらなる要請も視野に入れる。同省によると景品表示法に基づき、行政指導を受けた事業者もいるといい、周知徹底していく。

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