新型コロナウイルスの感染拡大が与える世界経済への減速リスクが深刻化している。エネルギー需要の低迷・減少が現実化。産出国、その消費国の経済に影響を及ぼすことが避けられない状況だ。こうしたなか、日本エネルギー経済研究所(IEEJ)が、コロナによるエネルギー需要低下への影響を石油、天然ガス・液化天然ガス(LNG)について分析を試み、レポートで発表している。
 感染者数、地域が拡大し続けるなか、IEEJの小山堅常務理事首席研究員はコロナが世界経済に2020年を通じて悪影響を及ぼす「長期化シナリオをたどりつつある」と指摘する。
 3月下旬に発表したレポートでは、国際通貨基金が1月時点で発表した世界経済見通しを、コロナの影響がない場合の需要見通し基準とし、需要減少の状況を地域別、製品・用途別に分析した。
 「長期化シナリオ」では感染度合いが比較的小さいイラン以外の中東地域、南米、アフリカ、南・東南アジア、ロシア・中央アジア、オーストラリアへも感染が広がり、ピークアウトした地域(東アジアなど)の観光・貿易や資源依存の高い国の経済に負の影響を与え続けると想定し、石油需要は昨年の年間平均日量1億バーレルから250万バーレル(0・7%)以上の減少。天然ガスは840億立方メートルから60億立方メートル減、LNGが3億4900万トンへ前年比500万トン減少するとの見通しを示した。
 需要減の石油製品の特徴として、交通用燃料の需要に影響が出る。欧米やアジアにおけるジェット燃料ガソリンの大幅減を予測。逆にナフサやLPG・エタンの減少幅は相対的に小幅に収まると試算した。天然ガス・LNGは消費の中心地であるアジアのほか、欧州での需要落ち込みが激しくなるとまとめた。
 いずれも需要減少幅は大きく、価格低下はエネルギー産出国の経済に負の影響を及ぼすだけでなく、「エネルギー投資の停滞にもつながり、需給バランスの展望や消費国経済にとっての懸念材料にもなる」(小山氏)と警鐘を鳴らしている。

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