施設での隔離が始まって4日経った。仮に日記をつければ、昨日と今日、今日と明日を入れ替えても大差ない。隔離生活とはそんな退屈な1日の繰り返しだ。あと1週間。残りの日数を指折り数え、解放後を思い描く。

 アラームが鳴るのを待つまでもなく、午前7時前には目が覚める。さして疲れもないので、すっきりした目覚めだ。
 顔を洗い、テレビのリモコンに手をやる。BGM替わりにCCTV(国営中央テレビ)を流し、ストレッチでなまった体を動かすことから一日が始まる。
 決められた日課の一つが1日2度、午前8時と午後1時に行う体温検査だ。7時50分。体温計を脇の下に挟み込む。36度5分。平熱を確認して少しほっとする。

対面問診はなし

 8時を少し過ぎる頃には、乱暴にドアがノックされる。「吃飯(食事だよ)」。防護服を着た担当者が朝食の入ったビニール袋を配ってまわる。粥、冷めたゆでたまごに饅頭、とうもろこし-。いつものメニューだ。白い餡の入った饅頭を一口かじった後、あきらめてカップ麺のお湯を沸かすのも日課となった。日清の「カップヌードル」。昨日はシーフードだったから今日はカレーにする。タブレットパソコン(PC)で日経新聞の電子版を読みながら麺をすする。東京も大変だ。

 8時半を過ぎると、内線電話が鳴る。「おはようございます。体温は何度でしたか。体に異常はないですか」。いつもの女性からだ。同じホテルに詰めているのだろう。対面しての問診は、この間一度もなかった。

救いのネット注文

 ネットで食料を注文できるのが救いだ。検疫官から、外売(ワイマイ)、いわゆる出前による料理やアルコールは駄目だが、水やカップラーメン、菓子、パンなど包装され保存の利くものは注文可能だと告げられた。
 早速、500ミリリットルのPETボトルの水を2ダース、カップラーメンやウーロン茶などを頼んだ。パンが良いならと、試しにマクドナルドの「ビッグマック」も一つ頼んでみたが、無事に届いた。品物はフロントに着いた後、担当者が部屋まで運んでくれる。日中ならネット注文から2時間足らずで品物が手元に届くが、夕方に頼むと翌朝になることもあった。
 生活規則で唯一、文章で細かく指示されているのが消毒作業だ。支給された消毒剤を水道水で割り、目的に応じた濃度の消毒液を自分で作らなければならない。
 例えば、室内のテーブルや家具、洗面台、トイレの拭き掃除は1日1回。また、生活ごみを出す際は2枚の袋を用意し、1枚目にごみをいれて閉じた後、その袋自体に消毒液をスプレーして表面全体を濡らす。それをもう1枚の袋に入れ、部屋の外に出すといった具合だ。トイレを使用する際は、事前に便器内に消毒剤を2~3粒投入する。使用後、1時間待ってから水を流す。

SNSで発散も

 日中は退屈しのぎに会社や知人に電話したり、SNS(ソーシャルネットワークサービス)の動画チャットを利用する。たわいもない会話で笑うことが、なによりのストレス発散だ。
 日本に退避させている家族にも電話してみる。妻からの慰めの言葉も期待するが、3歳の娘の面倒を四六時中みている自分の方が大変だと返される。「苦労自慢」の応酬も、日課の一つだ。(但田洋平)

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