7都府県に発令された緊急事態宣言により、多くの事業所が対象に含まれた化学大手。とくに千葉、神奈川、大阪、福岡には工場や研究所が集積している。東京本社は役員から従業員まで原則テレワークとし、出社禁止とする企業もある。しかし工場や研究所はテレワークでは対応できない業務が多く、各社は工夫を凝らし稼働を続けている。
 横浜に中核の研究拠点を構える三菱ケミカルは「すでに長期の実験で中断が難しい案件を除き、在宅でも可能な実験補助作業などは極力出社せず取り組む」方針だ。一方の工場。緊急事態宣言の対象地域ではないが、茨城事業所は5月初旬から7月にかけて2年に1回の法定点検が予定され、現段階ではスケジュール通り実施する方向だ。ただ数千人規模の作業員が全国から集まるため「感染防止の観点から、どういう対応がベストか、日程変更の可能性を含め行政とも相談し検討中」としている。
 現状、各社の工場はほとんどが通常通り操業中だ。マスク向けを含めメルトブローン不織布を各種産業用に供給している三井化学は、1月に増設した設備が早くもフル稼働に達し、消毒液向けのイソプロピルアルコール(IPA)についても需要に生産が追い付かない状況が続く。
 しかし、こうした感染拡大防止に役立つヘルスケア材料以外では今後、設備の停止が相次ぐ恐れもある。とくに自動車などユーザー産業の生産停止が長引くと、化学材料は生産調整を迫られるのは必至とみられる。食料品や医薬品などの生活必需品に関連する化学材料の需給はひっ迫する一方、自動車など耐久消費財の需要が停滞し化学材料に波及するまでに時間がかかり、数週間後以降、生産調整を迫られる可能性は否定できない。鉄鋼では自動車向け需要減少の長期化をにらみ、高炉を停止させたり従業員の一時帰休にも踏み出そうとしている。
 なお、石油・石化が集積する神奈川県は、政府方針を踏襲した「緊急事態宣言時に事業の継続が求められる事業者」を公表、県内への周知を始めた。ただ「呼び掛けベースのもの」(県くらし安全防災局総務危機管理室)で、具体的な補助なども今のところはない。

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