【シンガポール=中村幸岳】インド政府が、国内企業保護を名目に輸入化学品を対象とする「COVID-19(新型コロナウイルス)関税」の導入を検討している。税率は一律15%、今年5月から2021年3月末までの期間限定で課税することなどが議題となっている。背景には現地化学メーカーや業界団体の要請があるもようだが実現可能性は低く、7日時点で実施されていない。

 インド政府は5月1日、全土で実施中の都市封鎖を17日まで延長すると発表した。化学産業も大きな打撃を受けており、同国商工省が管轄するインド基礎化学品、化粧品、染料輸出促進協議会(CHEMEXCIL)は先月、「いま(経済活動を再開した)中国などから安価な化学品が流入すれば、国内化学産業は大きな打撃を受ける」と強い懸念を表明していた。

 COVID-19関税も「業界団体からの強い要請が背景にあるようだ」(ムンバイで駐在を続ける商社筋)。エチレンや合繊原料パラキシレン、二塩化エチレン、塩ビモノマーなどは対象外となるようだが、既存関税に15%が上乗せされる仕組みは現実的と言えない。関係省庁間の足並みも揃っておらず「(実施に向けたスケジュールが)具体的に検討されてはいないと理解している」(同)。

 インド商工省によると、同国の3月輸入額は前年同月比29%減、輸出額は同35%減といずれも大幅に減った。化学品物流も停滞している。基礎化学品や合成樹脂、オレオケミカルなどのスポット輸入は消滅し、長期契約に基づいてインドに仕向けられる化学品も多くが洋上や港で滞留。人員不足と需要減で、通関業務や顧客の製品引き取りが大幅に遅れている。

 国内化学メーカーが軒並み稼働率を落とすなか、特別経済区(SEZ、生産品の一定比率を輸出することが義務づけられる一方で減税措置が適用される)内にある工場は、比較的高い稼働率を維持している。例えばリライアンス・インダストリーズは西部グジャラート州ジャムナガルのSEZ内に構える拠点で製油所の稼働率を2~3割落とす一方、化学品生産設備は高稼働を維持。合繊原料や塩ビモノマーの輸出を続けている。

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