新型コロナウイルスの感染拡大で消毒用アルコールが不足している。これを受け、厚生労働省は10日、酒造メーカーが作るアルコール濃度の高い酒を消毒液の代わりに使用可能とする通知を出した。大手は国を通じ医療機関などに消毒液の原液を供給する一方、中小はあくまで飲料としての販売となるが、高濃度品の生産を増やし消毒液の代替需要に対応している。

 サントリーホールディングスは、国の要請を受け傘下のサントリースピリッツ大阪工場(大阪市)で蒸溜したアルコールの一部を、医療機関などに4月下旬から無償提供する。アルコール度数は約95度で供給数量は現在調整中という。

 また、海外では傘下の米ビームサントリーが米ケンタッキー州で医療機関向けに消毒用アルコールなどをすでに提供。インドネシアでは医療用防護服やマスクも寄付している。サントリーの担当者は「国・地域で必要とされる物資や法規制などは異なるものの、新型コロナに対しグループ一丸で対応していく」と話す。

 宝酒造は、国からの協力要請を受け95度の高濃度アルコールを、医療機関・高齢者施設などに販売していく。供給数量は一斗缶(18リットル)で月産約5000本を見込み、千葉県の松戸工場を含む国内2拠点で製造する。

 一方、中小の酒造メーカーからは消毒・除菌目的ではないが、飲料用の高濃度アルコールを増産する動きが各地でみられる。ドラッグストアなどではアルコール消毒液が品薄のため、代替品としたい消費者などからの注文で殺到している模様。

 茨城県水戸市の明利酒類は、65度の高濃度アルコール(ウォッカ)製品のオンライン販売を6日から開始。同社によると「注文も非常に多く、営業部門の人員も活用し製造体制を強化している」とフル稼働で対応。ただ一部の外装資材が不足し、小ロットの注文は取りやめた。

 富山県砺波市の若鶴酒造も77度の高濃度製品の供給を開始したところ、消費者や医療機関などから問い合わせが殺到。現在は週1000本を製造するも、需要に追い付いていないようだ。

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