新型コロナウイルス感染拡大の影響が国内の建設工事に及んでいる。大手・準大手ゼネコン各社で建設現場における感染者発生により現場閉所や工事中断が相次いだ。今年は石油化学コンビナートの定期修理工事が集中する「メジャー定修年」に当たる。新型コロナウイルスの影響が懸念されるが現状、計画変更などの動きは出ていないようだ。経済産業省は定修完了時期を4カ月延長させる措置を取った。石化各社は必要であればこの措置を活用するなどして定修を完了させ、化学品のサプライチェーンを維持してほしい。

 大林組、鹿島、清水建設は工事事務所や建設現場で感染者が発生したことから、緊急事態宣言の期間中、発注者や協力会社との協議のうえ、工事事務所の閉所や工事中断といった対応を取ることを決めている。同様の対応は準大手ゼネコンにも広がっている。

 国内の石化コンビナートは今年、春から秋にかけ定修工事が集中することになっており、予定通り実施できるか関心が高まっている。幸いメンテナンス専業大手であるレイズネクスト、山九、高田工業所の3社には感染者は現在のところ発生しておらず、計画通り受注工事を実施するとしている。また業界構造も違うため、ゼネコンのように受注者から発注者に計画変更を要請することもなさそうだ。

 ただ感染者が出ればゼネコン同様の対応を検討しなければならなくなる可能性がある。そうならないためにも現場に入る人員を絞るなど、作業員の密集を避けるための工程見直しなどが検討されていい。その結果、工事に若干の遅れが生じても、感染者発生にともなう一定期間の現場閉鎖よりもましだろう。

 経産省は2020年4月1日から9月30日までの期間に保安検査および定期自主検査を満了する予定の事業者に対し、4カ月延長することを認める措置を取った。延長の必要性が顕在化しているわけではないが、石化各社は、この特例措置の活用も含め柔軟に対応し、無理なく遂行してほしい。新型コロナウイルスの拡大で化学品や各種素材の国際的なサプライチェーンに懸念が広がっており、国内に安定した供給基盤を維持することは極めて重要になっている。

 また今回の事態を機に設備保全における定修工事の比重を小さくすることを検討すべきだ。デジタル技術を活用したスマート保安により日常保安の役割を高め、定修工事の際にも省力化を進める。操業以来50年超の高経年設備が増えていくなか、作業員の確保はますます困難になると予想され、スマート保安のための投資が不可欠だ。

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