日本がコーデックス(Codex)委員会に提案した「バチルス属を使って発酵させた大豆製品のアジア地域規格」について、第43回の同委員会総会で策定作業の開始が承認された。策定が進み、規格が成立すれば、低品質の大豆発酵製品との違いが明確に示せるようになる。日本のお家芸ともいえる発酵製品の一つ、納豆の輸出拡大にも弾みがつこう。ヘルシーな加工食品として日本品質を世界に向けて積極的にアピールし、普及に弾みをつけたい。

 コーデックス委員会は、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)合同の政府間組織。国際標準となる食品の規格(コーデックス規格)や基準・指針などを定めている。納豆の地域規格策定にゴーサインが出るまでには長い道のりがあった。2014年、コーデックス・アジア地域調整部会(CCASIA)に、日本が納豆のアジア地域規格の策定の提案をしたことに始まる。その後、他のメンバー国から、アジアの類似の大豆発酵食品も含めた地域規格策定への要望が高まった。そして昨年、バチルス属を使って発酵させた製品のアジア地域規格として再提案。今年開かれたコーデックス委員会総会で作業開始の承認を得た。

 納豆には抗酸化、血圧降下、コレステロール調節、血栓症など生活習慣病の予防に関与する成分が含まれるとの研究報告がなされ、世界的にナチュラルなヘルシーフーズという認識が高まりつつある。納豆由来の健康成分の製品化も目立つ。納豆の輸出数量は、ここ数年伸びており、19年が2000トン超、輸出額も11億円超に及んでいる。20年は、新型コロナウイルス感染拡大によるサプライチェーン停滞などで落ち込んでいる可能性があるものの、先行き拡大が見込めるのは確か。日本食レストランが増えていることなどが背景にあるようだ。

 来年以降のCCASIAで地域規格案を議論するため、日本はアジア地域の関心国と規格案の作成を進めていく。バチルス属を使った類似の大豆発酵食品には韓国のチョングッチャン(主に味噌のような用途)、中国のトウチ(主に調味料用途)、タイのトゥア・ナオ・サー(同)などがある。日本の納豆とは使い方や風味に違いがあり、それぞれ市場は有望のようだ。

 世界では大豆発酵食品の需要が増加し、大豆以外の豆類を「大豆」として販売する業者も横行している。消費者を欺くような行為が減れば、発酵先進国としての日本の評判が食品を起点に高まる。発酵法によるバイオ・医療製品の国際競争力強化にもつながるのではないか。

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